アングルの取り方と空間の完成度
“アングル”だなんていうセリフをカメラマンでもない者がいけしゃしゃあと使うのはおこがましい限りだが、撮る位置が決まるまでの時間の短さと空間の完成度は正比例の関係にあるというのが私の持論である。効率が上がるから、良いマンションの撮影枚数は自ずと増えてしまう。室内を撮るときは、2つの視点でアングルを考える。ひとつは、空間をいかに切り取れば説明しやすいか。特徴を表しているか。そしてもう一つは、実際にそこに住んでみた場合の、住人の視線である。前者は義務で、後者は内覧の特権のようなものと勝手に思っている。もちろん、面白いのは後のほう。
モデルルーム撮影の鉄則は、最も長い対角線上にかまえてできるだけ室内全体を広く見渡して撮ること。物件の公式サイトにはそんなビジュアルが多いはず。しかし、普段の暮らしではそんな位置から室内をじっと見つめることはまずない。いつもの居場所から、どんな景色が視界に入るか。そんな視点で表現したほうが個性的で(場合によっては)楽しい画像になる。
アクセントウォールの効果
昨今流行りのアクセントウォール。賃貸分野でも活用されているようだ。建築家の各務さんは連載コラム【家の時間「建築家リフォーム」】でこんなふうに、その効用をうたっている。従来の分譲のマンションや建売住宅では、どこにどのような家具を置いても良いように、とにかくニュートラルで、クセのない空間を作ることが一般的でした。(中略)そんな時に、一つの壁に色を付けてみることを想像すると、それをキッカケにどこにソファーを置いて、テレビをどう配置するか、大事な絵や写真をどの壁に飾るかが見えてくることがあります。(中略)イメージや人の動線を考えながら壁にキャラクター(特徴)をあたえてあげると、とたんに空間の雰囲気が変わって、空間自体がイキイキとしてきます。それがアクセントウォールの考え方です。
さて、これから紹介するのは他でもない間取り。アクセントを色で設けず、設備や建具そのもので表現した「六本木ヒルズレジデンス」。幾度か見学の機会をいただいたが、室内に入った瞬間から家具の位置がイメージでき、住む人の目線を考慮して窓を開けたとしか思えないようなシチュエーションが少なくない。毎回驚かされる物件だ。今回ピックアップするのは、Mwタイプ 2ベッドルーム+スタディルーム<164.45平米>中高層階に設置されたメゾネットプランである。