バブル前の明るい角川スター映画

■作品名
愛情物語

■監督
角川春樹

■主演
原田知世

■DVD/Blu-ray発売元

角川書店

■おすすめの理由

本作は当時の日本映画界の風雲児・角川春樹氏によるスター映画、ミュージカル映画です。

主演の原田知世さんは角川氏が売り出した所謂「角川3人娘」のお一人で本作が主演二作目です。

世間一般に「トンデモ映画」の評価が優勢の作品ではありますが、今回久しぶりに観直してみて実に色々と興味深く思えました。

80年代は映画会社が売り出したいスターを主演にしたスター映画というジャンルがありました。これはストーリー等よりもスターの魅力を引き出すことに主眼が置かれており、アイドル映画とほぼ同じです。

正にその典型故、その文脈で理解しなければ本作は忽ち怪作と化します。よく本作の違和感に挙げられる点は
  • ストーリーの超ご都合主義、全く先が読めない展開
  • キーワードとなるはずの物・事が悉く未解決で終了
     
  • 前後のストーリーに関係なく突如何度も表れる原田さんのダンスシーン
  • 明らかに失敗、無駄なカットの多さ

上二つはエンディングを輝かせるためのお膳立て・ミステリアスな演出、下二つはクラッシックバレエの素養がある原田さんの魅力を引き出すための過剰演出と(好意的に)解釈すれば別段不思議はないという訳です。

普通の観客が鑑賞する際のお勧めポイントは、中盤、金沢から長崎へのロードムービーのパートです。

この場面は、情感と郷愁漂う80年代地方の美しい風景が、主人公の心象風景とうまく溶け合って見事です。

そして本作は日本のバブル期前夜を様々な点で想起させる作品です。

不幸な生い立ちを全く感じさせない主人公の突き抜けた脳天気さ、お気楽さは同期の他作品にも多く見られる特徴的パターンです。

また本作も含め所謂「自分探しの旅」が物語られ始めた時期でもあります。人々が物質的な豊かさから精神的なそれへと関心を移し始めた時期だったのではないでしょうか。

そして角川春樹氏の強引な手腕もこの時期ならではです。未熟な部分が目立つ一方、旧来の製作システムに風穴を開けた功績があります。

最後に原田知世さんは今も透明感のある女優として一線でご活躍です。氏の見る目は確かだったと言えるかもしれません。



※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。