理学療法士試験 生理学の問題傾向
生理学は解剖学同様、問題数も出題範囲も非常に多い科目です。内容としては、細胞、内分泌、骨生理、筋生理、呼吸器の生理、泌尿器の生理、生殖器の生理、循環器の生理、代謝の生理、感覚器の生理などがあります。出題傾向として、近年では長期臥床による患者への影響や血圧に対する投薬が及ぼす影響など、臨床を想定した生理的事象の問題がみられています。また、呼吸リハの需要拡大による呼吸器系の問題や生活習慣病である糖尿病に関わる問題、その関連である代謝に関する問題もよく出題されています。それでは続けて、実際の過去問題を解説していきます。
生理学の過去問題と解答
過去問題 第52回(2017年)腱をたたいて骨格筋を急速に伸ばすと起こる筋単収縮に関与するのはどれか。
- 筋紡錘
- Pacini小体
- Ruffini終末
- 自由神経終末
- Meissner小体
この問題の答えは【1】になります。かなり初歩的な問題であり絶対にとりこぼしてはいけない問題ですね。解けなかった人は伸張反射について再度復習しましょう。他の解答ですが、2のPacini小体は、圧や振動を感知する受容装置であり、皮膚、靭帯、関節周囲などにあります。3のRuffini終末は、皮膚の伸長や圧を感知し、皮膚(真皮)に主に存在します。4の自由神経終末は、侵害受容器として温覚、冷覚や痛み刺激に反応します。5のMeissner小体は、皮膚(表皮直下付近)にあり、触覚や皮膚変位に反応します。
過去問題 第52回(2017年)
細胞膜電位について誤っているのはどれか。
- 静止膜電位は負の値である。
- 活動電位は全か無の法則に従う。
- 活動電位の発火直後には不応期が存在する。
- 脱分極で極性が正の部分をオーバーシュートという。
- カリウムイオンは脱分極のときに細胞外から細胞内に移動する。
この問題の答えは【5】になります。カリウムイオンは細胞内に多く、脱分極の時に細胞外へ移動します。その他の選択肢の補足ですが、1の制止膜電位の値は、約-60~-90mVで負の値となります。2の活動電位は閾値を超えると発火し、越えなければ全く反応しないです。これを「全か無の法則」といいます。また、一度閾値を超えると、しばらくは高閾値となり発火しません。これが不応期です。
過去問題 第51回(2016年)
エネルギー代謝率の計算式で正しいのはどれか。
- 内的仕事量÷全仕事量
- 基礎代謝量÷基準体表面積
- 労作代謝量÷基礎代謝量
- 作業時代謝量÷安静時代謝量
- 作業時エネルギー消費量÷安静時エネルギー代謝量
この答えは【4】です。 エネルギー代謝率は、さまざまな身体活動やスポーツの身体活動強度を示すものです。活動や運動で必要とするエネルギー量が基礎代謝量の何倍にあたるかを活動強度の指標としています。その公式は以下の通りです。
- RMR = (活動時のエネルギー消費量 – 安静時のエネルギー消費量) / 基礎代謝量 = 活動代謝量 / 基礎代謝量
過去問題 第51回(2016年)
急性炎症の初期にみられるのはどれか。
- 乾酪化
- 繊維化
- 血管新生
- 好中球遊走
- 肉芽組織形成
この答えは【4】です。炎症初期、炎症部位から放出されるサイトカインにより好中球の活動が活発化します。その他の選択肢ですが、1の乾酪化は、結核により起きる乾酪壊死のことです。結核結節の中心部に生ずる壊死が、肉眼的にチーズ(乾酪)状を呈します。2の繊維化は、慢性期に起きる現象で、炎症部位が線維芽細胞を中心とする細胞増殖、線維素の分泌沈着などにより組織が硬くなっていく現象です。3の血管新生は、炎症部位、もしくは創傷部位に新たな血管枝が分岐して血管網を構築する現象で急性炎症では生じません。5の肉芽組織形成は、組織修復反応であり、慢性の反応です。
次のページでは、病理学の問題傾向について説明します。