子育て事情/子育て事情関連情報

映画「おしん」が、いま子育て中の私たちに伝えるもの(2ページ目)

「おしん」試写会で、私は涙を拭いながら無知を恥じた。「おしん」は、我慢強くて健気な可愛い女の子の、お涙頂戴の苦労話なんかじゃなく、おんなたちの誇りと生き方の話だった。

河崎 環

執筆者:河崎 環

子育てガイド

少女はやがて母になり、老女となる

おしんの母

母ふじは、奉公に出るおしんに「これからは一人で生きていかねば」と教える (c)2013「おしん」製作委員会

貧しい小作農であるがために、口減らしのために身を切る思いで子どもを手放す女。冬の凍り付いた河に身を浸して、堕胎を図る女。働けなくなった体で、それでも家族の大事な飯を食う自分を呪う女。与えられた仕事を必死に覚え、その見返りに居場所と飯にありつく女。字を覚え、本を読む女。生きることを周りに教え、働く女。雪の上に立ちすくむ男の肩を支える女。「仕方ねぇんだ」と泣き崩れる、繊細で脆(もろ)い男に飯をよそって渡す女。

悲しいものをたくさん見て、嬉しい思いもたくさんして、勇気と才覚で人生を切り開くうちに、少女はやがて「母ちゃん」に、母はやがて「ばんちゃん」になる。「おしん」には、子ども時代の私には理解できるわけもなかったであろうことがいっぱい描いてあったのだ。

加賀屋大奥様undefinedくに

裕福な呉服屋、加賀屋の大奥様くには、向学心のあるおしんを可愛がった (c)2013「おしん」製作委員会

後から来た者が、前の者をなじったり嗤ったりする、それが賢いと思っている世の中だ。だが、前を歩く者は後ろを歩く者たちと実は同じ思いをして歩んで来たのかもしれないこと思いを馳せる、その想像力を失ってはいけない。それぞれの女たちのドラマの上に、静かに雪が降り積もる。雪は諸々を抱いて、一面真っ白に積もるのだ。橋田壽賀子はとことん、おんなの味方だったのだなぁ。

おしんの幼少期を描いた映画版「おしん」は、泉ピン子、小林綾子をはじめとするオリジナルキャストの、さらに30年分成熟した演技の見応えは言うに及ばず、上戸彩や稲垣吾郎など絢爛たる新キャストが見せる新たな表情にも驚かされる。おしん役の濱田ここねの熱演に、同じく子役からの女優人生を長くする岸本加世子が贈った言葉が、私には染みた。「賢い君(きみ)には、輝く将来が待っている」。「おしん」ドラマ、そして映画の中でも、脈々とおんなたちが育っていくのだ。

おしんの生涯を見届けに、ドラマDVDを観たいと思った。いま母として家族を持つ女性たちにも、必ず響くものがあるに違いない。

(文中敬称略)
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