少女はやがて母になり、老女となる
母ふじは、奉公に出るおしんに「これからは一人で生きていかねば」と教える (c)2013「おしん」製作委員会
悲しいものをたくさん見て、嬉しい思いもたくさんして、勇気と才覚で人生を切り開くうちに、少女はやがて「母ちゃん」に、母はやがて「ばんちゃん」になる。「おしん」には、子ども時代の私には理解できるわけもなかったであろうことがいっぱい描いてあったのだ。
裕福な呉服屋、加賀屋の大奥様くには、向学心のあるおしんを可愛がった (c)2013「おしん」製作委員会
おしんの幼少期を描いた映画版「おしん」は、泉ピン子、小林綾子をはじめとするオリジナルキャストの、さらに30年分成熟した演技の見応えは言うに及ばず、上戸彩や稲垣吾郎など絢爛たる新キャストが見せる新たな表情にも驚かされる。おしん役の濱田ここねの熱演に、同じく子役からの女優人生を長くする岸本加世子が贈った言葉が、私には染みた。「賢い君(きみ)には、輝く将来が待っている」。「おしん」ドラマ、そして映画の中でも、脈々とおんなたちが育っていくのだ。
おしんの生涯を見届けに、ドラマDVDを観たいと思った。いま母として家族を持つ女性たちにも、必ず響くものがあるに違いない。
(文中敬称略)