幼児期以降に力を発揮する肌と肌のふれ合い
ハイハイや1人歩きが始まると、自分で動くことが楽しくてたまらなくなるので、確かにマッサージはやりにくくなります。ところが2歳近くになると、一時期遠ざかっていたマッサージをまた楽しむようになる時期がくることがあります。そして、肌にじっくり触れるという時間の積み重ねに助けられるようになってくるのが、幼児期です。2歳前後になると多くの子は、自我の急速な成長とともに「第一次反抗期」に突入します。優しく説明しても根気よく言い聞かせても、「いやだいやだ」と泣きわめく時期は、親の気力体力を吸い取ります。そんな時に、黙ってギュッと抱きしめ、背中をさすることで、子どもが落ち着くことがあります。子どもの落ち着きがじかに伝わってきて親もクールダウンできると、お互いの気持ちを受け入れやすい状態が生まれます。
思春期に入る前の時期こそふれ合いを
お子さんが大きくなった時にこそ、思い出してほしい時間です。
もちろんこれは、ベビーマッサージを経験していなければできないということではありません。少しだけ意識して心と声をかけて続けるスキンシップというものが、これから長く続く子育て、家庭生活の中で大きな力を発してくれることがあります。そのことについて考えるきっかけの1つとしてのベビーマッサージを、多くの方にお伝えしたいと常に考えています。
子どもは親が思っている以上に、スキンシップを求めています。親の方が、「もう大きいんだから」と、無意識のうちにお子さんに触れることがほとんどなくなってしまうこともありますが、思春期に入る前は、そういう時間を楽しめる残り少ない時間かもしれません。
育児には「3分の話」より「3秒のタッチング」が効くことも
私が、ベビーマッサージアドバイザーの養成講座を受講していたころの仲間から、「年老いた父親のハンドマッサージをしていたら、気持ちがほぐれてもっと理解したいという思いがわいた」「子育てで忙しい毎日の中で夫との会話も事務的になっていたけれど、ちょっと肩を叩いて声をかけることで、コミュニケーションがスムーズになる気がした」という話がありました。ベビーマッサージは、1つの入り口です。例えば、夫婦ともに仕事をしていたり、複数の子どもを育てていたりする場合や、子どもとの時間がなかなか持てない父親が感じる、「もっとこの子と向き合う時間があったら」の気持ち。「時間の長さより濃さ」ということも言われますが、実際子育てをしていると、限られた子どもとの時間をカバーするためにどうやって「濃く」したらいいのかと、考えてしまうこともあるでしょう。マッサージに限らず、親子、家族のコミュニケーションを濃いものにする色々なスタイルが各ご家庭に必ずあるはずです。今回のお話が、それぞれのご家庭で作り上げるコミュニケーションスタイルの、1つのヒントになれば嬉しいです。
【参考文献】『出産で女性は賢くなる』(小谷博子、ごま書房)
※ベビーマッサージは、誤った方法による実践に起因して、健康被害や骨折を引き起こす場合があります。実践する際は、必ず乳幼児の健康状態を十分に考慮し、正しい方法で行ってください。