王者YAMATO(左)と吉野が10・10後楽園で激突。中央はCIMA
出発点はプロレスラー養成学校
数あるプロレス団体の中でも若い女性ファンが多いのがドラゴンゲートです。身長は全員が180センチ以下、体重もほとんどが80キロそこそこ。既存の団体ではジュニア・ヘビー級にカテゴライズされる選手中心ですが、その分、スピードとテクニックは素晴らしく、空中技も織り込んだノンストップの戦いは驚愕の連続で、見る者を飽きさせません。そして選手個々のキャラクターの面白さ、マイクアピールから生まれるドラマ……ドラゴンゲートは最先端を行くプロレスと言っていいでしょう。ドラゴンゲートは、身体が小さくて新日本プロレスに入門できず、メキシコに渡って自力でプロレスラーになり、やがてメキシコ、日本、アメリカでトップを取ったウルティモ・ドラゴンが「自分のような境遇の若者を一流のレスラーに育てたい」という思いから1997年4月にメキシコで開校した闘龍門というプロレスラー養成学校が出発点になっています。
その一期生には現在のドラゴンゲートの象徴となっているCIMA、ドラゴンゲートでは最高齢となる43歳のドン・フジイがいました。闘龍門は99年1月31日にメキシコから日本に逆上陸して後楽園ホールで発表会的に興行を開催。これが大評判となり、同年7月に闘龍門ジャパンとして団体としての活動を開始。04年7月にウルティモ校長から卒業する形でドラゴンゲートに生まれ変わりました。
かつてCIMAは「この団体は夢や。技やない、力やない、デカさやない……心や。心があれば夢は掴める」と言いました。実際、闘龍門、ドラゴンゲートにはどんなにプロレスが好きでも、どんなに運動神経が良くても、身体が小さいことでプロレスラーになることができなかった若者たちが集まり、その才能を開花させました。ベースになっているのはルチャ・リブレ(スペイン語で自由な闘いの意)と呼ばれるメキシコのプロレスなので、普通のプロレスとは違って立体的な動きが多くなります。また身体のサイズが違うことで、大きい人とは試合の組み立ても、使う大技が違ってきます。身体が小さい分、機動力、大きな動きが要求されるので相当の身体能力を要求されます。その結果、ドラゴンゲートの選手たちは常に万全のコンディションでいるために徹底した体調管理をしているのです。
王者交代、ユニット再編!次の注目は10・10後楽園
若いイケメン揃い、しかもシェイプされた身体で華麗な技をノンストップで繰り出して動き回るのだから、若い女性ファンが多いのも当然です。そして初めて見る人にもわかりやすいのがミソ。ドラゴンゲートの基本になっているのはユニットによる軍団抗争です。現在は大御所のCIMA(と言っても35歳です)率いる俺たちベテラン軍、地味な職人的選手たちのジミーズ、ドリームゲート王者YAMATOをトップとした悪の集団マッド・ブランキー、メキシコ修行から凱旋して各ユニットに世代闘争を仕掛ける23歳のT-Hawkをリーダとした新世代ユニットのミレニアルズ、そしてマッド・ブランキーの謀略でユニット解散に追い込まれた鷹木信悟、戸澤陽、吉野正人らの新ユニット(まだ名前は無し)の5つのユニットが鎬を削っています。
「ユニットを覚えるのは大変ではないか?」と思うファンもいるかもしれませんが、心配は御無用。実際に会場に足を運べば、その場ですべてがわかります。なぜなら、各ユニットが試合だけでなく、マイクでも激しいやり取りをするので、それで今までの流れ、今後のことが自然にわかるのです。マイクを操ってお客さんを惹きつける能力もドラゴンゲートの選手にとっては重要な要素です。マイクのやり取りから生まれる連続ドラマがクセになり、いつのまにか常連になってしまったというファンも少なくありません。CIMAは06年にプロレス大賞の技能賞を受賞しましたが、本人は「技能のうちの半分はマイクや!」と笑っていました。
この夏、ドラゴンゲートは新時代に突入しました。11年12月からオープン・ザ・ドリームゲート王者に君臨して15度の防衛に成功していたCIMAが7月21日神戸ワールド記念ホールで鷹木に敗れて陥落。鷹木が新時代のエースになったと思いきや、8月23日の後楽園ホールでYAMATOが鷹木を撃破して、またまた政権交代。9月12日の後楽園では斎藤“ジミー”了の挑戦を退けて初防衛に成功したYAMATOですが、来たる10月10日の後楽園で吉野の挑戦を受けることが決定しています。
この10・10後楽園では鷹木と戸澤が大型黒人レスラーのウーハー・ネイションとトリオを結成して憎きマッド・ブランキーに3対5のハンディキャップマッチで挑みます。さらに9・12後楽園でジミーズを撃破して勢いに乗るミレニアルズが今度は俺たちベテラン軍に世代闘争を仕掛けます。めまぐるしく変わるドリームゲート王者、ユニット再編と激動期を迎えている今、10・10後楽園でも新しいドラマが生まれるのは必至。一度、会場に足を運んだら……きっとドラゴンゲートにハマります!