やけど(熱傷)の重症度
夏の強い日差しによる日焼けも、一種のやけどです。日傘や日焼け止めを上手に使い、皮膚を守りましょう
■やけどの深さ
やけどの深さは、3段階に分けられます。
・ 1度熱傷
日焼けに代表される表皮のみの損傷のこと。ヒリヒリして赤くなります。一時的に色素沈着が起こることがありますが、数日で自然に治り、やけど跡は残りません。
・ 2度熱傷
真皮上層までの損傷で、浅い1度と深い2度に分けられます。一般的に痛みが強く、赤くなり、水ぶくれができます。1度のタイプと違い、適切に治療をしないと、やけど跡が残ったり、皮膚が硬くなる「瘢痕化」が起きてしまうことがあります。
・ 3度熱傷
皮膚全層の損傷。痛覚が失われてしまうため、痛みはありません。痛みを感じない、痛みを訴えないからと言って安心してはいけないのです。やけど跡ははっきりと残り、ケロイド状に残ることもあります。皮膚が硬くなり、引っ張られるので、関節が曲げにくくなったりする場合もありえます。
■やけどの範囲
対表面積におけるやけどの範囲は、手のひらを使って簡単に推定することができます。大人の場合は、手のひらの範囲をだいたい1%と概算します。(あくまでも概算で、子供はこの限りではありません。乳幼児の場合は大人の手のひら2つ分で体表面積の10%に相当すると考えられています。)
1度熱傷の場合は、入院治療の必要はありません。しかし、深い2度熱傷や3度熱傷がある場合は、症状が軽そうに見えても病院を受診しましょう。
成人男性の場合、やけどの範囲が2度と3度を合わせて15%を超えると、体の中の体液が奪われ、血圧が急激に下るショックという状態に陥ることがあり、命の危険性があると言われています。大体の目安ですが、片足全体のやけどの場合、対表面積の約18%です。40%以上では、確実に生命の危機があります。高齢者や小児の場合では、10%を超えていると重症になることもあります。
また、体表面だけではなく、顔や肛門や陰部、そして、熱気を吸ってしまうことによっておこる喉のやけど(気道熱傷)の場合は、見た目の熱傷面積が少なくても入院治療となることがあります。表面的な外傷から予想される以上に、粘膜分も含めて熱傷面積が広いことがあるためです。
やけど(熱傷)の応急処置・治療法
■やけど(熱傷)に対して家庭でできる応急手当法まず、とにかく冷たい水で冷やすこと。衣服の上からでも、とにかくすぐに冷たい水をかけましょう。やけどの深さが進行するのを止めることができますし、やけど跡も残りにくくなります。また、やけどの痛みに対しても非常に効果があります。
冷却する方法で一番効果があるのは、水道水を出しっぱなしにしてかけること。水道水がかけられない場所であれば、冷たくしたきれいなタオルを患部にあてるのも効果があります。氷や氷のうを直接患部にあてると、皮膚が冷えすぎて、凍傷を起こすことがあるので注意が必要です。また、全身を冷たい水で冷やすと、低温症になる場合があるので、体温が下がりすぎないよう様子を見ながら行います。基本的には、痛みがなくなるか、15分程度冷やせば大丈夫です。水疱がある場合は破らないでください。無理に消毒薬を使う必要はありません。
広範囲なやけどの場合は、やけどの部分は冷やしますが、やけどのために体温調節がうまくいかなくなるため、体全体は保温する必要があります。きれいなシーツや毛布などで体をくるんで、救急車が来るのを待ちましょう。
■重症のやけど・全身やけどの治療法
重症のやけどの場合は、形成外科のある総合病院で治療するのが一般的です。病院によっては高度救命救急センターで対応することもあります。
広範囲のやけどを負ってしまうと、体の水分量とタンパク質が大量に奪われ、血圧を保つことができなくなることがあります。この場合は大量の点滴治療を行います。また、皮膚のバリアがなくなってしまうので、細菌などの微生物に対する抵抗力が低下するので感染予防を考えます。深い火傷の場合は、植皮が必要なこともあるので、状況にあわせて正しい治療を受けることが大切です。