第2位
とにかく低音がスゴイ。ガンガン聴いて思い切りノレる
ソニー MDR-XB920
「個性がはじける重低音 EXTRA BASS」なんてアピールされている通り、身体中が踊り出すような迫力の低音にどっぷり浸りたいという方にターゲットを絞ったモデルです。イヤホンにも低音重視モデルはありますが、頭蓋骨が揺さぶられるような低音再生能力は、やはりヘッドホンのほうが一枚上手かなと。それにしても、なんと派手なデザインでしょう。とくに赤モデル。全身に装備されたアルミパーツのシルバーと、ヘッドバンド裏やハウジング背面の赤とのコントラストは目立つこと請け合いです。同コンセプトの下位モデル「MDR-XB610」(希望小売価格1万2390円)には赤の代わりにオレンジをまとったモデルがあり、そちらも派手さでは引けをとりません。
サウンドのほうは、既発売モデルのMDR-XB900から大きな変更はないようです。エクストラベース振動板を採用した50mmドライバと、ドライバから鼓膜までの気密性を高めるとともに振動板前後の空間容積を最適化した設計により、ズシーンと塊感のある低音に浸れます。よく聴いてみると中高音もそれなりにクリアで、こもったように生気のない音ではありません。ただやっぱり、低音のほうが圧倒的に優勢です。
正直な話、見た目も含めて万人受けはしないかもしれません。筆者は同じソニーのMDR-MA900を所有していまして、あの地味で円やかで温かでふんわりした佇まいに夢見心地なのですが、そういう嗜好の方とはとくに相性がよくない気がします。逆に言えばMDR-MA900にピンと来ない方には大ハマりする可能性もあるわけで、この個性は尊重したいなというわけです。
もうひとつ、2位にあげた理由は実勢価格のお手頃さ。希望小売価格はボーズやJVCとほぼ同じなのですが、量販店では1万4000円台で売られていますし、価格比較サイトを見てみたら1万2000円なんて店もありました。この価格なら、普段お使いのヘッドホンとまったく個性が異なるサブヘッドホンとして、またストリートで無造作に使い倒す普段着ヘッドホンとして、お買い得感たっぷりではないでしょうか。ちょっと古めのポータブルプレーヤーでも思い切り鳴らせます。
■ソニー MDR-XB920
【主要諸元】
型式:密閉型、ドライバ:50mm、出力音圧レベル:106dB/mW、再生周波数帯域:3Hz~28,000Hz、最大入力:3,000mW、インピーダンス:24Ω、質量:305g(コード含まず)
希望小売価格:2万4675円
第1位
力強い低音の上に中高音をパアッと描き出す好バランスDJモデル
AKG K267 TIËSTO
とくに低音派の間から大きな支持を集めているのが、DJユースのヘッドホンです。パフォーマンス中のズレや装着疲れが起きにくい軽量で丈夫な構造、フロアに轟く大音量の音楽をものともしない遮音性と大音量再生能力、片耳でのモニタリングがしやすい機構や折りたたんで持ち運びやすい使い勝手のよさなど、美点がてんこ盛りです。ただ個人的な偏見で申し訳ないのですが、筆者はDJ用ヘッドホンに、低音がガンガン出てきて中高音は明快だが潤いや繊細さ、声や楽器の表情をリアルに表現する能力は控えめ、というイメージを持っていました。プロがブースで使用する仕事用のヘッドホンなのですから当然とも言えますが、本機はそんな思い込みをぬぐい去ってくれる、じつに音楽性豊かなサウンド。家庭内での音楽鑑賞にもピッタリだと感じました。
本機のTIËSTOは、2004年アテネ五輪大会でDJとして初めて開会セレモニーでパフォーマンスを行い、2008年はグラミー賞へノミネートされるなど、卓越した経験と実力を持つDJ/プロデューサーの名にちなんでいるそうです。プロ中のプロが開発に携わっただけあって、デザインは文句なしにカッコイイ機能美ですし、装着感がややきつめながら(筆者の頭が大きすぎるためです)、各部の作りも本格的。
気になるサウンドですが、さすがに低音は十二分に出ます。さらにこの低音、ぼやけながらボワンボワと広がるスポンジのように芯のない低音でも、ボインボインと跳ね回るゴムのように野放図な低音でもありません。ズッシリとエネルギーを蓄えながら制動力がきちんと効いた、アスリートの筋肉のような低音なのです。発売元では、最先端のダンスミュージックに求められる再生能力を備えると謳っていますが、この低音はどんな音楽ジャンルにも歓迎される音作りではないかと思います。
中高音も印象的です。低音に埋もれないだけのクッキリした描写力と楽器の音が混濁しない解像力を備え、音量を上げても刺々しくなりません。叫ぶようなギターの熱気からしみじみ聴かせるブルースの息づかいまで、繊細感を失わずキレイに聴かせてくれます。空気感や音場感はそこそこでも、それはクオリティの低さとは別物。
ハウジング背面のダイヤルで低音のボリュームを3段階に変化させられる機能にも注目です。家庭内で音楽を聴く際には「スタジオ」モードがいちばんバランスが取れているのですが、「クラブ」「ステージ」と切り換えるに連れて低音の量感が増してきます。中高音を絞って低音を残すのではなく、中高音を大切にしながら低音を増強する音作りですので、サウンドクオリティ自体はほとんど変わらないのが嬉しいですね。
■AKG K267 TIËSTO
【主要諸元】
型式:密閉型、ドライバ:50mm、出力音圧レベル:97dB/mW、再生周波数帯域:6Hz~30,000Hz、最大入力:3,500mW、インピーダンス:32Ω、質量:310g(コード含まず)、ケーブル長:300cm/550cmカール
実勢価格:3万7000円