遺伝子検査とは
ひとつの細胞には約2万種類もの遺伝子が含まれています。遺伝子から、特定の病気へのリスクや体質の傾向を調べるのが遺伝子検査です。
遺伝子検査とは、この遺伝子を構成している塩基配列に変化があるかどうかを調べる検査です。多くの場合採血によって行われ、血液中の細胞から遺伝子の情報がプリントされているDNAを取り出して検査します。細胞ひとつひとつには約2万種類の遺伝子が含まれていますが、目的とする遺伝子のみを調べます。
遺伝子検査を受け方(病院・キット)・費用の目安
遺伝子検査は「筋ジストロフィー」など特定の病気について調べる場合を除いては保険の範囲外の検査ですので、多くの場合自費になります。費用は検査の内容と病院によって異なりますが、数万円から数十万円かかります。検査ができる病院も限られていますので、どこでも簡単に受けられる検査ではありません。病院で行う検査ではなく、郵送で行う遺伝子検査キットなども販売されており、安価なものもありますが、信頼性に欠けるものもありますので注意が必要です。がん・生活習慣病……遺伝子検査の種類
遺伝子検査には、目的によって様々な種類があります。肥満になりやすい・糖尿病になりやすいといったいわゆる「生活習慣病」のリスクを調べたり、特定のがんになりやすいかどうかを調べたりすることが可能です。例えば「肥満遺伝子」の検査では、主に日本人の肥満に関係していると考えられる遺伝子を調べます。現在、人では50を超えるタイプの肥満遺伝子があることが明らかにされており、このうち日本人に関係する主な肥満遺伝子は、β3アドレナリン受容体(β3AR)、脱共役たんぱく質1(UCP1)、β2アドレナリン受容体(β2AR)の3つが挙げられます。
がんのリスクに関する検査で最近話題になったものが、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)のがんの発症に関与しているBRCA1遺伝子やBRCA2遺伝子の検査です。この検査は、BRCA1/2遺伝子検査と呼ばれ、この2つの遺伝子に変異がないかどうかを調べるものです。2つの遺伝子のどちらかに異常があった場合、異常がない人に比べて10倍以上の確率で将来乳がんや卵巣がんになりやすいということが分かっています。
遺伝子検査のメリットとデメリット
遺伝子検査のメリットは、遺伝子のレベルで自分の「体質」を把握し、早期に病気の予防や治療に役立てることができるという点です。早めに自分の「弱い部分」を把握しておくことは、自らが健康管理するという意識の高い方にとっては有効な手段の一つと言えます。検査を受ける一番のデメリットは、検査で異常があった場合の心理的ダメージです。人は「知る権利」と同時に「知らされない権利」というものも持っています。自分ががんになりやすい体質だなんて本当は知りたくなかったという方が、知ってしまったせいで逆に「将来がんになるかもしれない」という不安が強くなりすぎてストレスになるという場合もあります。遺伝子の異常が見つかった場合にどういった対処法があるのかをきちんと把握し、その結果を自分がどう受け止めるのかをあらかじめしっかり考えた上で検査を受けるかどうかを決める必要があります。また、遺伝的な病気の場合は、自分が検査を受けることによってその結果が自分以外の家族にも影響を及ぼすかもしれないことを考慮する必要があります。
このため、遺伝子検査を行っている病院の一部では、検査に伴う遺伝カウンセリングも同時に行っている施設もあります。検査の内容にもよりますが、遺伝子検査は決して興味本位で気軽に受ける検査ではないということを知っておきましょう。