地球儀のような地図の絵本『WORLD ATLAS』
「世界には、大きな海がひとつだけある」― これは、『WORLD ATLAS 世界をぼうけん! 地図の絵本』の中の一文です。このことばに、ドキッとされた方もいらっしゃるのでは? 世界の海といえば、太平洋に大西洋にインド洋に……と当たり前のように習ってきたけれど、海は、確かに一つなのです。紙の地図の右と左に分かれた海は、そう、くるっと丸めればつながるのですよね。海も陸も、「世界」は「地球」の上にあるのです。
ともすると暗記科目として終わってしまいそうな地理ですが、本来、その国がその場所にあるというのは、地形や気候、動植物など様々な要因が絡み合ってのこと、地図を読み解くのはとても興味深い作業です。
大判のハードカバーの絵本と、デジタルのアプリで登場した『WORLD ATLAS』。この絵本は、イラストが楽しい世界地図であり、力強く語りかけてくる文章に引き込まれる読み物であり、地理や環境が解説された世界事典でも図鑑でもあります。
東アジアのページ。右下にあるのがめくって読めるしかけ部分です
冒頭で示した一文に象徴されるように、『WORLD ATLAS』を貫く視点は「すべては、まあるい地球の上でつながっている」ということ。
自然― 私たちの身近にある海や大地は、太古からの記憶を持っています。一人の人間であっても、その歴史は、じっくり遡れば地球の誕生にまで行き着きますよね。まさに、すべてはつながっている、ということです。
そんな風に『WORLD ATLAS』は、世界や思考を、地球儀のように立体にする本なのです。
太平洋ゴミベルトに洋上風力発電所― 環境やエネルギーのこと
海のページでひときわ目を引くのが、「太平洋ゴミベルト」。コンチキ号やシャチと並んで、目を引く太平洋ゴミベルトのイラスト
プラスチックゴミが海を覆っている北太平洋の一帯です。ここでは、人間の生活から出たプラスチックゴミの影響で、毎年多くの海鳥が命を落としていると言われています。
また、温暖化の影響で、2040年には北極海の氷が全て溶けるかもしれないということや、海抜の低いオセアニアの小さな島が海に沈んでしまうかもしれないことが記されているほか、インド洋の海洋生物が石油の井戸から出る汚染物質で傷つけられていることなども説明されています。
さらに、エネルギー問題についても地域ごとに触れられており、新しいエネルギーを作る試みとして、デンマークの風車・中国の洋上風力発電所・キューバのサトウキビのカスを燃やして作る電気などが紹介されています。
これから、決して避けては通れない環境やエネルギーの問題。残念なことに今までは、文明が進化すればするほど、環境破壊が進むという状態でした。
地球の上で全てがつながっているという視点があるからこそ、世界の国々の明るく楽しい文化とともに記載された、環境破壊についての説明には説得力があります。それは、世界中を旅してまわったという作者の、地球を愛する気持ちと願いを込めた、子どもたちへのメッセージとも言えるでしょう。