生きることの厳しさを描いたドキュメント作品
■作品名『キタキツネ物語』
■監督
蔵原惟繕
■出演
町田義人、朱里エイコ、ゴダイゴ
■DVD販売元
サンリオ
初めて観たのは確か、小学校低学年のころでした。
学校の体育館で年に一度行われる、映画鑑賞の時間だったと記憶しています。
動物を主役にした映画にありがちな、彼らの愛くるしさを強調した作品ではなく、人間との感動的なふれあいを描いた作品でもなく……。
当時まだ小さな子どもだった私が、この映画に抱いた感想は、ただただ「怖かった」。
北海道に棲むキタキツネの夫婦に5匹の子ギツネが誕生します。厳しく美しい自然を背景に、この一家の生活を追ったドキュメンタリータッチの映画です。
すっかり大人になった今、改めて観なおしてみると、やはり子どもにとっては刺激の強すぎる場面が数多くあることがわかります。
子どもたちの餌を取りに出かけ、人間の仕掛けた罠にかかってしまう母ギツネ。
悲鳴をあげる母ギツネを襲おうとするアイヌ犬。
大きくなった子どもたちを自立させるために、激しく噛みついて巣から追い出す父ギツネ。
巣立った後の子どもたちを容赦なく襲うブリザード。
猟師に追われ、あえなく命を落とす子どもたち。
もちろん、
「罠にかかったお母さんを助けないで撮影していたの? 」
「生まれつき目のみえない子ギツネが、自ら海に飛び込んで自殺なんてアリ? 」
といった疑問もわいてくるのですが、キツネたちにとって「自然の掟」と「人間」は、私たちの想像を超えてはるかに残酷なものなのだと思い知らされます。
この『キタキツネ物語』は再編集され、2013年の秋に『キタキツネ物語~明日へ』というタイトルで上映されることが決まっています。
決してほのぼのとした気持ちで楽しめる映画ではありませんが、ぜひ、家族みんなで心して観たいものです。