戦争のあとにやって来る本当の悲劇とは……
■作品名はだしのゲン
■監督
山田典吾
■出演
三國連太郎、左時枝、佐藤健太、島田順司、大泉滉
■DVD販売元
北星
2012年の暮れに死去した漫画家・中沢啓治氏の代表作『はだしのゲン』。
中沢氏自身の被爆体験を元にしたこの漫画は、今やどの小中学校の図書室にも必ず置かれていると言っていいほど、よく知られた作品です。
初めて実写化されたのは意外と早く、1976年のこと。
国民学校2年生の中岡元(ゲン)は、原爆で父・姉・弟を一度に失う。燃える家の下敷きとなって生きたまま焼かれていく夫や子どもたちを目の当たりにした母は、ショックで産気づき、女児を出産。ゲン自身も原爆症で髪の毛が抜け始め……。
正直なところ、残酷すぎてちょっと正視できないようなシーンもあります。
今のようなCGによる映像処理技術もない時代に、よくここまで……と感心するほど、丁寧な作りの作品です。
原爆もとい戦争の悲惨さ・不条理とともに描かれているのが、主人公ゲンの子どもらしい天真爛漫さと、あの時代に生きた人間ならではのしたたかな強さ。
そして、戦争が終わったあとにやって来る、本当の悲劇。
被曝したうえに、差別された人々は、どんなに辛く苦しかったことでしょう。
戦争の犠牲者たちが戦後どんな過酷な運命を辿っていったか、ということについても、本作は原作に忠実に撮っています。
『はだしのゲン』実写版は三部作となっており、それぞれ出演者が違います。
今では問題視される表現も少なからずありますが、それも70年代だからこそ許されたのでしょうね。
DVD化してもらえて本当に良かった、としみじみ思います。