最初から最後まで独特のアンニュイな雰囲気漂う作品
■作品名もう頬づえはつかない
■監督
東陽一
■出演
桃井かおり、森本レオ、奥田瑛二
■DVD販売元
ジェネオン エンタテインメント
1970年代の空気を知っている方も、そのころまだ生まれていなかったという方も、最初から最後まで漂う独特のアンニュイな雰囲気にどっぷりと浸かれる作品です。
早大生のまり子(桃井かおり)は、同じく早大生の橋本(奥田瑛二)を自室に連れ込んでいる。二人の間に肉体関係はあるものの、そこに愛があるかどうかは疑問。まり子は元カレのルポライター・恒雄(森本レオ)が忘れられず、連絡が来れば会いに行くという関係が続いているが……。
恒雄は今でいう、典型的な「だめんず」。
まり子の気持ちを利用して、平気でお金の無心はするわ、しばらく行方不明になったかと思えば、いきなり現れてやることだけさっさとやって去っていくわ……。
きわめつけは、妊娠を告げるまり子に向かって「子どもは堕ろせ」。
ナレーターの森本さんしか知らない世代にとっては、あのしゃべり方でこんなひどい男を演じるなんてと、ちょっと違和感があるかも知れませんね。
一方で、橋本は純粋に「おこちゃま」。
頭の中はエロでいっぱい、しかもそれを隠そうともせず、
「いい? いいよね? ありがとう、まりちゃん!」
なんて言いながら、桃井さんにがっついていく、まだまだ青臭い奥田さんの演技が妙に微笑ましかったりします。
あと、まり子が住んでいる下宿の大家さん役で、ひそかに故・伊丹十三氏が出演していることを知っている人は少ないかも知れません。
恋愛映画のジャンルに入ってはいますが、タイトルが示唆するように、これはつまるところ女性の自立を描いた作品なのではないかと思います。
ラストシーンで引っ越しの準備をしているまり子の、何もかも吹っ切れた表情が印象的。
今とまったく変わらない、けだるく美しい桃井さんを堪能したい方にもお勧めです。