「第二次アニメブーム」の火付け役となった作品
『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』
■監督舛田利雄、松本零士
■声の出演
古代進(富山敬)、森雪(麻上洋子)、沖田十三(納谷悟朗)、デスラー総統(伊武雅之)
■DVD/Blu-ray販売元
バンダイビジュアル
■概要
ガミラスとの戦いから1年後、未知の惑星からの救助要請を受けヤマトは再び旅立つ。しかしそこに宇宙征服をたくらむ白色彗星帝国の脅威が迫り……。
■おすすめの理由
本作は「宇宙戦艦ヤマト」の劇場版第2作です。そして徹夜で映画館に行列が出来る等の社会現象を引き起こした所謂「第二次アニメブーム」の火付け役となった作品で、SFアニメ映画史に燦然と輝く名作です。
TVアニメの総集編だった1作目に対して、本作は劇場用として制作されました。
本作の魅力に挙げられるのはまず、豪華な制作スタッフが集結し超一級の仕事をしたことです。アニメーターには安彦良和氏、金田伊功氏、等の錚々たる面々が名を連ねます。
名場面を挙げるのに枚挙に暇がない作品ではありますが、例えば、ヤマトが再始動する場面、デスラーの登場場面、戦艦アンドロメダのデザイン、白色彗星から都市帝国が出現するシーンの描き込みは際立っています。
CGがない時代に手書きでこれだけのメカニックを表現できることに改めて感動を覚えます。
次に宮川泰氏による荘厳なフルオーケストラの魅力です。
全般的に音楽レベルの高さに定評があるヤマトシリーズですが、本作では特にパイプオルガンを用いた「白色彗星」のテーマが有名で、また主題歌・挿入曲共に誰もが一度はどこかで耳にしたことがある名曲揃いです。
そして最大の魅力はストーリーの壮大さ、スケール感です。日本のSF作品はガンダム→パトレイバー→エヴァを経て、描くテーマがセカイ系的な人間の内面、精神世界へ遷移しました。
その点ヤマトは日本SF史的にはむしろ少数派の純然たるスペースオペラです。しかしここに描かれる精神性の何と日本的なことか。そこにはスターウォーズ的な階級的・二元論的世界観はありません。
そこにあるのは宇宙を舞台にしていようともムラ的な自己犠牲の精神であり、それ故に本作は世界のSF史的に異形の大輪です。
そしてそれはややもすると“死を美化する”との批判に甘んじると共に日本的な優しさの源泉でもあり日本人の琴線に触れ得るのです。