世界平和のために戦地へと赴いた若者の話
■作品名ジョニーは戦場へ行った
■監督
ドルトン・トランボ
■主演
ティモシー・ボトムズ
■DVD/Blu-ray発売元
角川書店
腕がないから、自殺ができない。足がないから、逃げられない。目も口も鼻もえぐれているから、声をあげて助けてと叫べない。
そんな状態でも、あなたは生きていることに感謝できますか。
「ジョニーは戦場へ行った」は第一次世界大戦に出征した若者の話です。深く愛し合う恋人が泣いてすがるのを振り切って、祖国のため、世界「平和」のためにとヨーロッパ戦線へと赴き。
彼は肉の塊となって帰ってきます。
塹壕でまともに食らった砲弾で視覚、嗅覚、聴覚を失い、口もえぐれてしまったので、顔はつねに白いマスクのようなもので覆われています。壊疽をおこした両腕・両脚は切断されているため、ほとんど身体を動かすこともできず、ただ息をしているだけの、自分。
彼の想いは画面に文字としてあらわされますが、まわりにいる看護師や医師には通じない。
時折挿入される回想シーンの彼が若く、美しく、人生を謳歌しているように見えるため、「現在」のその状態の悲惨さが一層際立ちます。
彼が必死に意志をとつたえようしていたことに、ようやく気付いた看護師がつれてきた軍部の若い士官と思われる人が、「これは、モールス信号です」。そう上官に答えた時の表情。嗚咽を抑えられませんでした。
救われるシーンもありますよ。「キリストと呼ばれた男」という役名ででてくるドナルド・サザーランド(「24」のキーファ・サザーランドのお父さんです)氏と兵士たちのカードゲームのシーンです。
出撃前のひととき。下世話な話題で仲間ともりあがる男達。仮にもキリストならと思わなくもないのですが、このシーンはあるからこそ、最後までこの映画を観られるのかもしれません。
辛くなります。目をそらしたくなります。それでもこれも戦争の現実なのだから、観る必要がある。そんな映画です。