クライムムービーの傑作
狼たちの午後
名優アル・パチーノの若かりし頃を代表する作品です。1972年ニューヨーク州ブルックリンで実際に起こった銀行強盗および籠城事件を題材に、名匠シドニー・ルメットが切り開いた斬新なクライムムービーの傑作です。ルメットの場合、通常なら徹底したリハーサルを強いる監督、しかし本作の殆どのシーンを、役者達のアドリブに任せる手法を取っています。それが功を奏し、銀行強盗犯と人質、警察、観衆という3つに大別される配役が、各々に独自な緊迫感を醸しだし、ストーリー顛末を盛りたてる効果を惹き出しています。
特に警官側の鬼気迫る攻防は、リアリティを追求していて、呑みこまれそうな錯覚すら感じます。
主役のアル・パチーノは小柄ながら大きな存在感です。個人的にもゴッド・ファーザーで見せた演技よりも、この映画でのアル・パチーノこそ役者としての頂点じゃないかと思います。
生き場も出口もない銀行強盗犯が、何故かしら英雄にされてしまう風潮は滑稽ですが、妙に憎めないところがあります。
■狼たちの午後
・監督 シドニー・ルメット
・主演 アル・パチーノ、ジョン・カザール