金持ちはすべてを「シンプル」に考える
「成功は、シンプルから生まれる。」これは、Google創業者セルゲイ・ブリンの言葉です。私のやってきたこともこの言葉どおり、シンプルなことでしかありません。私は今、自由を謳歌しています。不動産仲介など事業の運営はビジネスパートナーに任せているので、会社に通勤する必要もなければ満員電車に乗る必要もありません。
そのため、好きな時間に起き、好きな時間に寝る。旅行に行きたくなったら行けるし、休みたいと思ったら休めばいい。今も、マレーシアに出張に行く飛行機の中で、コーヒーを飲みながらこの原稿を書いています。好きな相手とだけ付き合い、面倒な人とは付き合わない。だから毎日が楽しく、余計なストレスとは無縁の生活です。
このような生活を手に入れることができた大きな理由の一つが、私が追求しているテーマでもある、「よりシンプルに考える」「よりシンプルに行動する」というものです。でも私がそれに気づいたのは、30歳を過ぎてからのこと。それまでは、社会人としては本当にダメダメ人生を歩んできました。
ダメダメだった20代。フリーター、ニート生活からウツ寸前にまで追い詰められた……
20代の頃。就職氷河期にもかかわらず、就活には乗り遅れ、仕事が決まらないまま大学を卒業しました。生活のため、ビル清掃のバイトなど必要最低限の仕事はしていましたが、1日のほとんどの時間をアパートで過ごすフリーター生活をしていました。いまの言葉で表すなら、ニートといえるでしょう。大学生のときに借りていた奨学金も返せないので、返済の開始時期を延期してもらったくらいです。フリーター生活に不安になった頃、簿記の専門学校主催の就職フェアに参加しました。なんとか都内の会計事務所から内定をもらい働き始めました。夏も終わりのことです。しかし、やる気満々だった私を待っていたのは、みじめな日々でした。最初の仕事は、顧客からもらってくる会計伝票の入力という、本当に単純な仕事でした。しかし、いきなり入力ミスやら計算ミスを連発。
それが何度か続き、わずか1カ月ほどで「コイツは使えない」というレッテルを貼られるようになりました。毎日、先輩や上司から怒られ、「なんでこんなこともできないんだ」と説教され問い詰められる日々。ストレスで朝も起きられなくなり、遅刻することが増え、だからさらに怒られる。
最後は、職場で笑うこともできなくなりました。ついに惨めさと精神的なしんどさでウツ寸前となり、「もうダメだ。辞めよう……」と、逃げ出すことを決めました。そして1年後、「お前、どうするんだ!」と詰め寄られ、私は小さな声で「はい……辞めます……」と答えるしかありませんでした。就職してからわずか1年のことです。
これが、私の社会人としてのスタートでした。この経験から、私は意識して「考え方」を変えようともがいてきました。
「シンプル」こそが不安定な時代を駆け抜ける武器
そしてやっと自由を手に入れました。もっとも、この生活が何年続くかはわからないので、まったく不安がないといったらウソになります。固定的な収入はなく、すべてが変動費ですから、不安定と言われればその通りです。しかし、いわゆるルーティンワークはほぼゼロ。すべて楽しんでやっている仕事ばかりです。個人投資家・作家・講演家としての顔を持ちつつ、ビジネスとしては新事業の立ち上げやアジア新興国進出支援などを中心に活動しています。それもすべて、自分が「面白そう」と思えるものだけをやり、面白くなくなればやめる。このシンプルな考えのみです。
もちろん私は、自分が成功したなんてこれっぽっちも思っていないし、まだまだ現状に満足はできていませんが、今のようになれたのは、こんなふうに「シンプル」に考え「シンプル」なやり方をしてきたからです。なぜなら私は、複雑なものよりもシンプルなもののほうが本質に近いと考えているからです。
それは、省略するとか割り切るとか一言で片付けるといった短絡的な発想ではありません。先の見えない不安定な時代を軽やかに駆け抜けるひとつの知恵であり、正解が存在しないリアル社会で人生を切り開くための有力なアプローチだと考えています。
ビジネスはもちろん、投資もシンプルに考える
実は、投資も同じです。「投資で利益を上げるのは難しい。たくさんの勉強が必要だ。」そう感じる人も多いかもしれません。しかし、不動産投資のキモは「入居者が確保できるかどうか」です。ということは、入居者の視点に立ち、彼らがどういう基準で賃貸物件を探し、何を優先して物件を決めるかを想像すれば、誰にでもわかる話。そう、場所が便利で家賃がリーズナブルな物件です。株でもFXでも投資信託でも、「安い時に買って高い時に売る」ですから、皆がパニックになっている暴落時に買い、皆が浮き足立っている好景気の時に売ればいいだけ。難しい分析なんて必要ありません。
もちろん仕事もそうで、流行りのデジタルガジェットやクラウドサービスにお金を使っても、やるべきことが増えて、より複雑になるだけです。それよりも、そんなものを捨てたほうがよい場面もある。手帳やノートのほうがアナログかつ自由でいい。充電しなきゃいけないもの、電池がなくなれば終わり、というものを減らす。ニュースは検索できるから、記事のクリッピングなんてやめてしまう。
人間関係もシンプルにすること。それはつながりを希薄にしろということではなく、他人の言動にいちいち目くじらを立てないということです。最近では「非常識だ」「そんなことしちゃいけない」「道徳的にどうなのか」「不謹慎だ」なんて怒ってばかりの発言が目につきますが、そういう人は他人に自分の感情をコントロールされているのです。
他人に依存しない。他人からの影響を最小限にする。「他人は自分ではコントロールできない。だから自分が変わればいい」と考えれば、会社や政府がおかしなことをしても、自分で何とかしようと必死に行動するので、不満も最小限に抑えることができます。
そしてもちろん、人生も。「人生は甘くない」と考えてしまうと、複雑で難しいものが価値あると捉えてしまいがち。だから忍耐やら我慢が尊いとなり、人生が窮屈になる。それよりも、「人生楽勝」「別に命まではとられるわけじゃないし」と考える。
そうすれば、リスクに囚われずに挑戦できる。失敗したことも引きずることなくすぐ忘れ、良かったことだけ覚えている。そのため、ますます挑戦体質になる。ストレスも溜まらない。それが、より変化に強い生き方になると私は思っています。
あらゆる場面において、もっともっとシンプルに考える。
「目的を達成するには、どこを押さえればいいか?」というポイントにフォーカスする。それ以外の瑣末な事柄は思い切って捨て、ToDoの数を減らしていく。そうすれば、仕事も人生も、もっと余裕が生まれるし、もっと楽しめるようになるはずです。もちろんすべてが皆さんにあてはまるわけではないですが、もっとシンプルに物事を考えることで、お金持ちへの道もより近くなると思います。【関連記事】