プロの芸人が悲鳴を上げる過酷さ
「史上最もシビアなお笑い番組」と銘打たれた「オンバト」。中には「もう出たくない!」とボヤいた芸人もいたとか。闘志むき出しのはずの若手にそこまで思わせたのは、独特のシステムにありました。30分のオンエアにもかかわらず、出演する芸人は10組。各組の熱演が終ると、100人の観客兼審査員がオンエアに相応しいネタかどうかを投票します。全組のネタが演じられた後に、投票結果が明かされ、原則的には上位5組がオンエアされ、下位5組は客前で演じたにもかかわらず、ネタが日の目を見ることはありません。
さらにシビアなのは、ネタ見せの前と後にコメントを求められることです。落ちた結果をに対してコメントする辛さは計り知れません、それでも次点の6位であれば、ザブングルばりに「悔しいです!」と吠える手もありますが、それが最下位だった日には何と言えばいいのか?
厳しさの中で実力をたくわえる
こうした過酷さの中で若手芸人は実力を伸ばしていき、2000年以降のお笑いブームを作り出しました。民放各局も漫才、コントを中心にしたネタ番組をスタートさせ、20%を超える視聴率を獲得するなど、お笑い芸人および所属事務所にとっては、まさにわが世の春というべき時期が続きました。この流れの中で、中堅芸人は着実にレギュラー番組を増やしていき、その中には現在まで人気を保っているものも少なくありません。しかし、その一方でネタ番組は徐々に一時期の勢いを失い、昨年ついに民放ゼロの状態に戻ってしまいました。
「オンバト」終了の一因には、視聴者がネタ番組を見る習慣がなくなってきたという悲しい現実もあったのでは。この件については、いずれ詳しく言及してみるつもりです。