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賃料下げ競争から付加価値提案へ。賃貸フェア取材録

2013年7月30日、31日に東京ビッグサイトで行なわれた『賃貸住宅フェア2013』に行ってきました。今年は、業界の変動、時代の節目、大きなパラダイム転換のあったフェアだったと思います。注目の講演について、解説します。

上野 典行

執筆者:上野 典行

賃貸・部屋探しガイド

東京ビッグサイト

東京ビッグサイトで開かれた賃貸フェア


2013年7月30日、31日に東京ビッグサイトで行なわれた『賃貸住宅フェア2013』に行ってきました。全国賃貸住宅新聞社が主催するこのフェアは、今年で19回目を迎える賃貸業界最大のフェアです。特に東京会場で行なわれるフェアは、最も参加ブースも来場者も多く、業界全体が注目するフェアです。
賃貸住宅フェアについて、詳しくはこちら。

大きな変化があった2013年のフェア

特に、今年は、業界の変動、時代の節目、大きなパラダイム転換のあったフェアだったと思います。例年のフェアでは、インターネットでの集客や、建設や土地活用、オーナー向けの税務や法律、あるいはリフォームなどの講演がたくさん行われていましたが、今年は、新しく講師に選ばれた人が、積極的に業界の中で起こっている変化や兆しを発表されていたように思います。

大げさに言えぱ「歴史的な変化の賃貸フェア」だったのではないでしょうか?

スター誕生。ハウスメイト谷さんの「賃貸カスタマイズ」

最初の講演では、ハウスメイトパートナーズ東東京支店長の谷尚子支店長が、『管理会社の挑戦! 現場の女性チームから生まれた「賃貸カスタマイズ」を発表されました。初日の開場10分後というタイミングにもかかわらず、立ち見が出る大盛況。明るくはきはきとした谷さんのキャラクターもあいまって、講演後は、名刺交換を求める長蛇の列となりました。まさに、業界に「スター誕生」の瞬間だったかもしれません。

谷支店長

ハウスメイトパートナーズ谷支店長の講演

彼女の発表内容は、女性チームが現場から考えた「rashiku」という、退去物件の壁紙や照明を次の入居者が選べるという新しいパッケージ内容。5月21日に新聞記事で青木純さんの壁紙が選べる賃貸物件の記事を読み、それをなんとか、自分たちの会社でも取れ入れようと頑張ったお話は、聞く人の心をとらえるだけでなく、これからの管理会社のあるべき姿に一石を投じました。

「rashiku」については、こちらを参照。

つまり、「埋まらないから、家賃を下げましょう」「それでもダメなら広告料を上げましょう」とは真逆の「物件の壁紙や照明を選べるという付加価値をつけて、物件の魅力をあげましょう」という提案でした。

「起業家」「シングルマザー」へのシェアハウス

東都小室専務とストーンズ細山社長

東都小室専務とストーンズ細山社長の講演

同じ時間帯にもうひとつ注目の講演がありました。東都の小室専務と、ストーンズの細山社長による『「起業家支援型」「シングルマザー向け」成功したコンセプトシェアハウスの事例と今後の動き』です。シングルマザー専用のシェアハウスが登場することは、ちょっと昔では考えられなかったことです。賃貸業界が、ただ箱を作って貸すという時代は終わり、様々なターゲットに、様々な個性的な提案をしていくことがどんどん始まっています。既に「シングルファザー向け」すら提案が始まっているということにわくわくせずにはいられません。

企業が社宅などを売却しても、さて、その物件をどう活用していくのか。風呂などが共同で、単身向けアパートにするには不人気。今後増える高齢者をターゲットにしようとしても、エレベーターがなかったり……。そんなとき、シェアハウスとして新しい住まい方を提案していく。素敵ですね。そこで社会的な弱者を意識して「シングルマザー向け」に活用し、働くお母さんたちが助け合って生きていくつながりを提案していく。賃貸業界が大きく変わっていく事例だと思います。

学生を中心としたNPO団体が、木造賃貸を再生する

モクチン企画

モクチン企画・連代表理事と川瀬副代表理事

そして、11時からは、特定非営利活動法人モクチン企画による『工事費70万円で築40年アパートを家賃1万円アップできる再生手法』が講演されました。木造の築古賃貸物件の再生を、建築学科の学生たちがアイデアを出して、価値を上げていく。なんという素晴らしい試みでしょう。

モクチン企画について、詳しくは、こちら
モクチン企画のナレッジがたくさんつまっている、モクチンレシピはこちら。

NPO団体としての取り組みは、社会的にも意義があり、WEBで、その知識を「レシピ」として公開するという姿勢は、日本の木造賃貸を革命的に再生していく可能性を感じました。しかも、ローコスト。お金をかけて大規模改修するのではなく、小さなアイデアや工夫で、借り手に提案していくという発想は、住生活の改善をリアリティをもって取り組む手法として、とても注目されるものといえるでしょう。

大学教授と管理会社が、あるべき管理を語り合う

HEAD研究会

HEAD研究会の座談会は象徴的なものでした

昼には、一般社団法人HEAD研究会の、市萬の西島社長、リビタの内山常務、東大の松村教授の座談会。こちらの座談会もすごかったです。「時代に合わせて変わっていく、いや時代を変えていくぐらいじゃなきゃダメだ」と松村教授が語る姿は、多くの聴衆にとって衝撃的だったと思います。

HEAD研究会について、詳しくはこちら。

リビタの内山常務の会社では、シェアハウスごとにコミュニケーション担当の若手社員が専門にいて、細かいトラブルを対応していく。今までの管理会社にはまったくなかった世界です。こうしたリビタさんには、東大の学生が就職しているとのこと。まさに賃貸業界は、学生にとっても魅力的な存在に変わりつつあるのです。

物件の管理から資産の管理へ

三好不動産の伊瀬知執行役員の講演では、これまでの賃貸管理から資産管理へと変わる最先端の事例が紹介されました。空室を埋め、家賃を集めるという仕事だけでなく、相続などの相談を率先して受け、物件だけでなく保険なども含めて、オーナーの資産全体をコンサルティングしていくという姿勢は、これまでの賃貸業界を「脱」するものです。

また、猪俣IREM-JAPAN理事の講演では、全国のNOI率を比較して分析をしていくという、これまでの不動産会社とは全く違った、世界水準の物件管理・不動産投資のコンサルティング術が紹介されました。

全国から集まった不動産会社や大家さんが、まさに肝を抜かれるセミナーが目白押しであり、驚きの連続のセミナーが繰り広げられました。

2日目の注目の講演はこちら。
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