実習の学びはとても大きい
学校の座学では保健師について興味を持てなかったのに、実習に参加したことで考えが変わった人たちがたくさんいます。理由を聞いてみると、意外なことがポイントになっていることが分かります。よく聞く意見の代表は、実習先の看護師はとても厳しいのに、保健師は優しいという意見。病人を相手に命を預かる看護師と、地域で健康を守る保健師という立場を考えれば、当たり前のことなんですが、右も左も分からない実習生にとって、優しさに興味を持ってしまうのは無理もないことだと思います。
また、座学でなんとなくしか理解できなかった保健師の仕事を、実習を経験することでやっと把握し、興味を持ったという話もよくあります。今の保健師教育の流れは、実習を始める前に選択を迫るものに変わりつつあるため、こうした話は少なくなるのでしょうが、できればより多くの学生の方々に生の保健師の姿を見て、感じてもらいたいなと思います。
実習先の保健師の言葉に影響を受ける
秋田県のSさんの場合、看護学校に入った一番の目的は養護教諭になるためでした。もともと血を見るのが苦手だったので、看護師になるつもりもなかったといいます。そんななか、勉強を進めていくうちに興味の対象が保健師へと変わってきました。もっとも影響を受けたのは、実習先の町の住民活動がとても充実していたこと。それを保健師がしっかりサポートし、とてもいい関係が築かれていたこと。そして、実習先の保健師が「保健師は地域の組織を育てていく力がないと活動が根無し草になってしまう」と話すのを聞き、すっかり感動。後にこの町の保健師となったSさんは、感動の言葉をくれた先輩保健師と共に働くようになりました。
実習の出会い
福井県のKさんは、ひとりの患者との出会いがきっかけになっていました。それは病棟実習で関わった方で、生活習慣病が悪化し入院。病棟では管理された生活で改善していったものの、退院した後にどうなるのか、とても気になっていたひとりでした。糖尿病の管理が必要になることも
これを期に、病院がゴールじゃないんだ、地域が大切なんだと感じたKさん。保健師への気持ちが高まり、故郷で就職することとなりました。
元気な高齢者に驚く
地方の場合、病棟実習で接する高齢者は寝たきりの割合が多いといいます。北海道のSさんも実習先でそれを実感したひとりでした。ところがその後、包括の保健師が指導者となった看護実習で、在宅の高齢者訪問や介護予防事業に関わると、病院と違い、地域で元気に暮らしている人たちにたくさん出会いました。病院のなかの世界は、高齢者=寝たきりのイメージが強かったのに、外の世界はまったく違うことに改めて気付いたといいます。そして、指導担当の保健師が話した、
「私たちは元気なお年寄りを増やしています。病気になって寝たきりになる人を減らす仕事をしているのです」
との言葉に、「病院がすべてじゃないんだ!」と気付いたSさん。看護学校を卒業後、さらに保健師学校にも通い資格を取りました。
ちなみに、その保健師学校の実習はかなり個性豊かなもので、ひとつの町に1ヶ月間、実際に暮らしながら地区の把握から各種の教室までひと通りを行うもの。指導役の町の保健師も学生たちの意見を真剣に聞いてくれたので、なお一層、保健師という仕事が好きになったといいます。
皆さんもいろいろな場面で、よい出会いがあるといいですね。