コレラとは……原因・症状・潜伏期間
下痢で体内の水分が失われ、脱水になります。
感染から発症までの期間は1日以内です。
軽い場合は、軟便で1日数回程度すが、重症になると、突然の嘔吐と下痢、白色または灰白色の水便になります。まさに、「米のとぎ汁様」と表現されています。これは、下痢の回数が多いため、便色を示す肝臓からでてくる胆汁が便に混じらないためにです。
重症な場合、1日10リットル以上の下痢になります。そのため、脱水状態がひどくなり、血圧が低下、皮膚の乾燥と弾力が無くなり、意識がなくなってきたり、尿が少なくなる「乏尿」、尿が出なくなる「無尿」などの症状が起こります。脱水で目のあたりがくぼんだ顔つきになり、これを「コレラ顔貌」と言います。また、手がしわしわになってしまう「洗濯婦の手」と言われる状態になることもあります。発熱はほとんどなく、また、腹痛も無いことが多いです。
コレラの診断法・治療法
コレラの診断は、便の培養検査によって行います。治療は主に輸液で、脱水への治療が中心となります。抗菌薬は、下痢の期間と便からの菌の排泄期間が短くなることで使用されますが、下痢がピタッと止まるわけではありません。抗菌薬は、ニューキノロン系、ミノサイクリン系抗菌薬です。
菌を排出するために下痢をしているので、安易に下痢止めは使用しません。そのため、下痢で失われる水分補給が中心になるのです。
コレラの流行地域と対策法
日本でのコレラは海外からの輸入食品か海外で感染して帰国することが多いです。そのため、コレラが流行している地域に渡航する場合には、ワクチンをしておきたいものです。南アジア、アフリカで多く見られます。これらの国でも生水、生食品を食べないようにしましょう。
コレラの発生地域です(WHOより引用)。赤い部分への地域の渡航にはぜひワクチンを
詳細は厚生労働省検疫所のサイト
コレラ予防に有効なワクチン・予防接種
コレラ予防に対しては、以前は全菌体死菌注射ワクチンが使われていました。最近では効果、 安全性の両面から使われなくなる傾向にあります。海外での全菌体死菌注射ワクチンの防御効果については30~50%程度で、 持続は3~6カ月程度とされています。現在、主に使用されているのが下記の2種類のワクチンです。
■経口不活化ワクチン( Dukoral または Colorvac )
熱またはホルマリン処理したO1コレラ菌と無毒なコレラ毒素Bサブユニットとを組み合わせたものです。
接種方法:通常は7~42日の間隔で2回投与。10カ月後位に追加接種を行うこともある。2歳以上6歳未満では、1週間ごとに3回接種。
副反応:軽度の腹部不快感程度で、非常に副作用は少ない。
効果:バングラデシュでの治験で85%が6カ月間の効果があり、 50%が3年間の効果があると報告されています。 ペルーでの効果は86%です。
コレラ毒素Bサブユニットは、毒素原性大腸菌(ETEC)易熱性毒素と似ているため、旅行者下痢症の多くを占める毒素原性大腸菌に対する効果を発揮します。実際に、 短期間の報告では、50~60%程度の効果が示されています。
■弱毒生ワクチン(Orochol または Mutacol)
CVD 103-HgR(稲葉569B株という菌由来で、 有毒なコレラ毒素Aサブユニットの部分の効果を無くして、水銀に抵抗を示す遺伝子を導入したもの)
接種方法:1回の経口投与
副反応:軽度の悪心、 腹痛、 下痢などですが、ほとんどが軽症。
効果:古典型コレラ菌で82~100%、 エルトール型コレラ菌で62~80%
効果は、少なくとも6カ月間(あるいは2年間)持続。
辛い下痢症状を予防するためにも、インド・アフリカの大部分、アジア、中南米の一部の地域への旅行やビジネスなどでの渡航予定がある場合には、ぜひとも接種しておきたいワクチンです。
先進国ではコレラで死亡することは少ないのですが、海外での医療状況によっては脱水のため、様々な合併症を起こすことがあります。特に高齢者、胃を切除した人の場合は重症化しやすいので、注意が必要です。