不動産の「先物と直物」とは?
不動産流通の現場では「先物(さきもの)」や「直物(じかぶつ)」という用語が使われることがあります。
「先物」といっても、もちろん商品先物取引や金融先物取引とは意味合いが異なり、数か月後あるいは数年後に完成する不動産を取引することでもありません。
一般の方が不動産の「先物」や「直物」の意味を知らなくてもとくに不都合はありませんが、これを知っておくと取引の中身を理解するのに役立つでしょう。
上の図で、売主Aから専属専任媒介契約または専任媒介契約によって売却の依頼を受けた不動産業者Aから見た場合に、物件Aのことを「直物」といいます。
「じかぶつ」のほか「じかもの」、あるいは「直物件(ちょくぶっけん)」ともいいますが、どう呼ぶのかは業者あるいは担当者によって異なり、統一されたものはありません。
同様に、売主Bから一般媒介契約によって売却の依頼を受けた不動産業者B1、B2、B3から見て、物件Bが「直物」となります。
それに対して、上の図の不動産業者Cから見た場合における物件A、物件Bが「先物」です。
Cは売主から売却の依頼を直接受けておらず、Cを通して物件Aや物件Bを購入あるいは検討しようとする者から見れば、「先に別の業者が存在する物件」という意味で「先物」といわれるようになったのです。
不動産業者Cは、業者A、B1、B2、B3の承諾を得たうえで、「先物」である物件Aや物件Bを自社の広告に載せることができます。一般向けの物件情報検索サイトであっても同様です。
インターネットで物件検索をしたときに、複数の業者から登録された同一物件がいくつも並んでいることがありますが、これは一般媒介契約で売却の依頼を受けた複数の業者という場合だけでなく、「先物」を取り扱う複数の業者の場合もあるのです。
取引態様として単に仲介(または媒介)としか記載されていないことが多く、見分けが付かないことも少なくありません。
物件Aを購入しようとする買主は、不動産業者Cを通して契約することも、不動産業者Aと直接やり取りをして契約することも可能で、どちらの場合であっても仲介手数料が発生します。
同様に物件Bを購入しようとする買主は、不動産業者Cを通してでも、B1、B2、B3のいずれかを通してでも契約をすることが可能です。
「直物」を取り扱う不動産業者A、B1、B2、B3と直接やり取りをしたほうが、話がスムーズにいくことが多い反面で、何らかのトラブルが生じたときには不動産業者が買主の味方になってくれるとはかぎりません。
完全中立の立場であるべきとはいえ、付き合いの長い売主寄りの態度になってしまうことも多いでしょう。それに対して、「先物」として取り扱う不動産業者Cを通して契約をすれば、何らかの問題あったときにはCが買主側のスタンスで交渉にあたってくれることを期待できます。
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