年金/損をしない年金の受け取り方

アルバイト収入があると年金が減るって本当?

定年後は年金が家計のメイン収入となるわけですが、現在の水準では、年金だけで生活のすべてをまかなうことは難しいのも事実。そこで定年後にアルバイトでも、となった場合、年金にはどう影響するのでしょうか? 年金が減らされない人とは、自営業として事業所得を得ている場合や、会社勤めをしていても厚生年金に加入していない場合、個人年金・配当収入を得ている場合などです。

綱川 揚佐

執筆者:綱川 揚佐

年金ガイド

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年金はアルバイト収入があると減らされる? その誤解と本当のところとは?

「収入があると年金は減らされるんでしょう?」「受け取れなくなるんでしょう?」という話をよく耳にします。これは、半分は本当ですが、半分は誤解です。収入の額によって、年金が減額もしくは全額停止となってしまうことがあるのは事実ですが、すべての収入についてそうなるわけではありません。年金が減額になってしまう可能性がある収入は、主に「厚生年金に加入して得ている給与」です。それ以外の収入は、年金にはほとんど関係がないのです。
年金が減額になってしまう可能性がある収入とは

年金が減額になってしまう可能性がある収入とは

年金が減額されない収入の具体的な例としては、
 
  1. 自営業として事業所得を得ている場合
  2. 会社勤めをしていても、厚生年金に加入していない場合
  3. その他、個人年金や配当金など
といったところです。

「アルバイトをしたいが年金を減らされたくない」という場合は、厚生年金に加入せずに勤めればよいということになります。

なお、ハローワークからもらえる雇用保険の給付の中には年金(65歳前の厚生年金)が減額や停止になるものもあります。具体的には以下の2つです。
  • 基本手当(いわゆる失業保険、受給終了まで年金は停止)
  • 高年齢雇用継続給付(厚生年金加入者の場合、年金減額)

厚生年金に加入しないで会社勤めをする方法は?

厚生年金に加入している事業所であれば、正社員、嘱託、パート、アルバイトなどの雇用形態にかかわらず、原則として厚生年金に加入します。しかし、次の2つの条件両方を満たした事業所に勤務していれば、厚生年金に加入する必要はありません(事業所が厚生年金の任意適用を受けている場合を除く)。
  • 個人事業の事業所であること
  • 人数が5人未満であること。または農林漁業、サービス業などであること
 
なお、弁護士事務所や会計事務所などのいわゆる士業事務所で、5人以上雇用している事業所は、令和4年(2022年)10月から厚生年金の適用対象となりました。

もう1つ、厚生年金に加入しない勤務方法があります。それは、「月の労働日数または1週間の労働時間が、常時雇用者の4分の3未満」である働き方です。一般的には、1日8時間、週5日で月20日労働の事業所だとして、次のいずれかの条件を満たせばOKです。厚生年金に加入せず、給与や賞与をいくらもらっても、年金の額には影響がありません。
  • 月15日未満=週3日程度(少しでも働けば、労働した日とカウント)
  • 週30時間未満
 
現時点では従業員数が101人以上の事業所および国や地方自治体の事業所(人数不問)については、上の条件に加え、以下の条件のうち1つでも満たされていなければ、厚生年金に加入しなくて済みます。

つまり、以下の4つをすべて満たせば厚生年金に加入することになります。
  • 週の労働時間が20時間以上であること
  • 月の給与が8万8000円以上であること
  • 2カ月を超える期間の雇用が見込まれること
  • 学生ではないこと
 
大きな事業所は厚生年金に加入しやすくなっている(=厚生年金に加入せずには働きにくくなる)ということです。役所や大きなスーパーなどでアルバイトをする場合は要注意ですね。

ちなみに、厚生年金に加入する労使合意(労働者の1/2以上と事業主との合意)があれば、100人以下の事業所でも、上記の条件で厚生年金に加入する事業所になることができます。小規模な事業所でも労使合意がある場合は注意が必要ですね。

なお、上記の条件は令和6年(2024年)10月に変更が予定されています。具体的には、従業員数の境界線が「101人以上」から「51人以上」に変更されますので、要注意です。

厚生年金に加入すると、年金はどうなるの?

年金を受け取りながら、厚生年金に加入している(=フルタイムあるいは比較的それに近い勤務形態である)場合は、年金額が減らされたり、停止になったりする可能性があります。支給停止になる金額は、次の計算式で計算されます。なお、ここでいう「年金月額」には、厚生年金基金の代行部分を含み、老齢基礎年金、老齢厚生年金のうち経過的加算、加給年金は含みません。
 
  • {月額給与総支給額+(過去1年間のボーナス合計÷12)+年金月額}が48万円を超える場合、その超える半額が支給停止(月額)
※雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整は別途計算
※令和4年(2022年)4月の法改正により、年齢にかかわらず基準額は同額になりました

なお、上記の計算式における基準額は48万円としていますが、令和5年(2023年)4月から基準額は48万円となる予定です。3月までは、令和4年(2022年)度の47万円となります。

いずれも、支給停止額が年金月額より多ければ、年金はゼロになってしまいます。

ここで注意したいのが、計算に入れるボーナスは「過去1年間のもの」である点。アルバイトではボーナスが出ないとわかっていても、過去1年以内にボーナスをもらっていれば、そのボーナスが計算に反映されてしまうのです。高額なボーナスをもらっていた場合、会社を辞めてアルバイトをしていても、厚生年金に加入していると当初1年は年金は減額、あるいはゼロというケースもあり得るのです。

また、給与月額は正確には「標準報酬月額」という、保険料計算のために国に登録されている額を使用しますので、実際の給与額とは異なる場合もあります。

ちなみに、計算の対象および支給停止の対象となるのは、あくまで厚生年金部分のみ。繰上げ支給を含む老齢基礎年金は支給停止の対象にはなりませんので、老齢基礎年金を受けている人は、年金がゼロになることはありません。

厚生年金部分についても、経過的加算は減額対象に含みません。加給年金は原則として減額されませんが、上の計算式で計算した結果年金額がゼロとなった場合は、加給年金も全額支給停止となります。

年金が減額されない給与はいくらまで?

上の式から逆算すると、令和5年(2023年)4月以降は「給与月額+ボーナス月額」が「48万円-年金月額」以内であれば、年金が全額支給されることになります。

仮に計算対象となる年金年額が100万円の人の場合、年金月額は8万円強ですから、ボーナスも入れた給与が39万円程度であれば、年金は減額されないことになります。ただ、給与を仮に50万円もらえるところを、無理して39万円に抑えて年金を全額もらうほうが得かというと、何ともいえないところです。

「年金が減額されるのは惜しい!」という考え方もありますが、50万円の給与+減額された年金を受けるほうが、トータルの収入では多くなります。収入が多いのを優先したほうが、貯金などもでき、将来の年金額も増やせるわけですから、目先の損得ではなくライフプランの上で考えたいところですね。

年金以外にも収入があるなら確定申告をすべき?

年金受給者は昔から「確定申告が必要だ」といわれてきました。しかし、所得は年金のみで、次のような人なら確定申告は不要です。もともと年金から税金は引かれておらず、年金の額も公的年金等控除の範囲内に収まっているため、所得を計算すると0円になるからです。
 
  • 65歳未満で年金額が60万円未満
  • 65歳以上で年金額が110万円未満
 
また、アルバイト収入など年金以外に所得がある人は、原則として確定申告が必要ですが、次のような人なら確定申告は不要です。
 
  • 年金額が400万円以下で、年金以外の所得が20万円以下の人
 
アルバイト収入などは給与所得とされ、給与所得控除後の所得金額が20万円以下(年金を除く年収75万円以下)なら、確定申告が必要ないというわけです。

ただし、上記にあてはまる人でも、医療費控除などで税金の還付を受けたい場合は確定申告をする必要があります。また、所得税の確定申告は不要でも、住民税の申告が必要となる場合もありますのでご注意ください。

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