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日本の住宅技術が世界へ セキスイハイムinタイ(後)(2ページ目)

セキスイハイムがタイで行っている戸建て住宅事業についてのレポートの後編。今回は、実際にどのような住宅を建てているのかに焦点をあてます。同じ仏教国の人々ですが、求められる住まいは私たちとは大きく異なるようです。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

ハウスメーカー選びガイド

人々の暮らし方や住まい観は国や地域によって大きく異なるものです。気候風土や生活習慣も日本とは大きな違いがありますから。ですので、日本の住宅技術を輸出するだけでは充分でなく、それぞれの人々向けにカスタマイズすることが重要となります。

日本とは異なるタイの住まい事情

今回のタイの取材では、工場に建設された「ダーウィン」のモデルハウスのほかに、「住宅展示場」と建設現場2ヵ所で、どのような住宅を建てているのか確認することができました。このうち、「ダーウィン」モデルハウスと住宅展示場について以下に紹介します。

ダーウィン

「ダーウィン」の外観。タイの住まい方を反映し、玄関がないのが特徴的。さらにバルコニーも設けられておらず、日本の住宅とはかなり趣が異なる(クリックすると拡大します)

まず「ダーウイン」のモデルハウスですが、日本との違いが明確に表れていたのが玄関がないこと。これはタイの住宅では直接履き物を脱いでリビングなど、住宅の内部に入ることが一般的だからです。日本人と同じく靴を脱いで住宅内で過ごす文化をタイの人々は持っていますが、こんな違いがあるのです。

室内の床材より木材よりタイルが好まれるとのこと。暑いタイでの暮らしでは、ひんやりとしたタイルの方が過ごしやすいのです。また、各居室にはそれぞれシャワールームも設置されていました。これもタイのニーズだといい、日本式のユニットバスは入浴の習慣がないことから採用されなかったそうです。

タイルの施工は居室だけでなくシャワールームでも必要となり、当初はその施工精度の低さが課題となったとのこと。日本のような大工さんを中心とする職人制度が整っていないため、セキスイハイムの品質に合うよう施工する人材の育成にも努力したといいます。

このほか、日本では一般化している作り付けの家具より、内装・インテリアは自分たちで後付けするのが主流だそうです。というのも、タイの人々の住宅のこだわりは、どちらかというとインテリアが中心で、そちらにお金をかける傾向にあるといいます。

次に住宅展示場ですが、この展示場はバンコク郊外の大型ショッピングモールの中にあり、モデルハウス2棟とショールームで構成されるものでした。ちなみに、タイには「住宅展示場」というものがありません。モデルハウスというものも存在しません。

タイでは分譲住宅を購入するスタイルが住宅取得における基本形だからです。逆にいうと、注文住宅が戸建て取得の王道である日本の方がむしろ珍しい存在。世界的には注文住宅で家を取得するというのは本来、大変リッチな人たちにしかできないことなのです。

遮音性や空気質の良さに高い評価

ここにあるモデルハウスは玄関付き。で、この玄関、現地の方々には「ドラえもんののび太くんの家みたい」と好評だといいます。意外なところで、日本文化の浸透度合いを感じさせられました。また、日本でいう仏壇のスペースが設けられており、仏教国ならではの住まいのあり方を感じる機会となりました。

仏壇スペース

モデルハウス内の「仏壇」スペース。敬虔な仏教徒が多いタイでは、仏壇をどちら向きに配置するかで家族の運勢が変わると信じられているという(クリックすると拡大します)

さらに、ここでは日本の住宅の遮音性の高さも売りになっているそう。ショッピングモールですから外では車の騒音が聞こえるわけですが、「建物に入ると音が聞こえない!」と、現地の人々から驚かれるそうです。タイでは近年、騒音のほか大気汚染も問題化していますから、気密性の高さや空気質の良さなどにも高い関心が寄せられるそうです。

ところで、近年、家電などの分野で世界における日本の存在感が薄れつつあるとの指摘を良く目にします。確かにタイにも中国や韓国の企業が多数進出し、その勢いは目を見張るものがあります。しかしながら、特に高性能な住宅の供給という意味では、少なくともタイでは他に競合相手が見当たりません。

日本の住宅が高性能なのは、品質や施工精度住み心地はもちろん、耐震性や省エネ性、環境への優しさなど高度なニーズに対応しているからです。このほか、バリアフリーや子育て配慮などといった点でもバラエティーに富んだノウハウが蓄積されており、それはアジアを中心に今後世界中で必要とされるようになると思われます。

日本のハウスメーカーの海外展開は新たな挑戦であり、セキスイハイムもタイで様々な模索をしていました。しかし今後、この経験が世界における日本の存在感をさらに高め、人々の暮らしをより豊かにするという、平和的な貢献につながるのではないか、それが今回の取材を通じて強く感じたことでした。

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