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日本の住宅技術が世界へ セキスイハイムinタイ(後)

セキスイハイムがタイで行っている戸建て住宅事業についてのレポートの後編。今回は、実際にどのような住宅を建てているのかに焦点をあてます。同じ仏教国の人々ですが、求められる住まいは私たちとは大きく異なるようです。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

ハウスメーカー選びガイド

前回は日本のハウスメーカー・セキスイハイム(積水化学工業住宅カンパニー)が、タイ国内に工場を建設し、いよいよ住宅販売を本格化した、という話をご紹介しました。今回は、具体的にどのような住宅を、どのように販売しているかについて書いていこうと思います。海外の住宅事情を知ることは、これから日本で住宅を取得しようという方々にも、きっと参考にできる部分があるはずです。

タイの住宅市場は年間着工50万戸の規模

まず、タイにおいて住宅市場がどのような状況なのか確認しておきましょう。タイの人口は約6408万人(2011年現、JETRO・日本貿易振興機構ホームページ参照)で、人口の10%ほどが首都・バンコクで生活しているといいます。そしてタイ国内の新設住宅着工件数は年間約50万戸程度だといいます。

分譲住宅地

バンコク郊外にある分譲住宅地の様子。街が塀で覆われ入り口がある「ゲーティッドコミュニティ」も開発されている。治安の良い日本ではあまり見られないスタイルだ(クリックすると拡大します)

一方、日本の人口は2012年現在で約1億2870万人と、タイのほぼ倍です。しかしながら、新設住宅着工件数(2012年度)は約89万戸。人口と住宅着工の状況を比較すると、タイの住宅ニーズがいかに旺盛であるかを理解できると思います。

とはいえ、国民一人あたりのGDP(国内総生産)は日本の46,735ドルに対し、タイは5,678ドル(IMF-World Economic Outlook Databases参照)と決して大きくはありません。ただ、いえるのは、首都・バンコクを中心に「中間層」と呼ばれる経済力のある人たちが徐々に増えてきているということです。

バンコク周辺は近年、鉄道など交通網の整備が進み、特に市内中心部から2006年に全面開港した「スワンナプーム国際空港」につながる鉄道の沿線では、大規模な開発が続けられています。そこで中間層と富裕層を対象にした新たな住宅建設が行われているのです。

ここまで難しい統計や数字が並んでしまいましたが、要するに新しく生まれつつある中間層と呼ばれる人たちを中心に今、住宅を求めるニーズが拡大しつつあるというのがタイの現状であり、だからこそセキスイハイムはタイで住宅を供給することにチャンスを見いだしているというわけです。

さて、ではその中間層、あるいは富裕層の人たちは、どの程度の価格の住宅を取得しているのでしょうか。現地のセキスイハイム関係者によると「建物だけで500万バーツ(約1500万円)が一つのライン」といいます。さらに土地を合わせると、1000万バーツ(約3000万円)程度(バンコク周辺)が、同社がターゲットとする標準的な住宅購買層のイメージなのだそうです。

現地の実情に合わせコストダウンを実施

このことから私が感じたのは、もちろん場所にもよりますが、「住宅の取得費用は日本とあまり変わらない」ということ。言葉を換えると、住宅取得というのはどこの国であっても、やっぱり高額であり、だから住宅は夢の買い物なのだということです。

モデルハウス内部

住宅展示場のモデルハウスの内部。富裕層や中間層をターゲットとしたゴージャスな内装だ。取材中にもお客さんが来て、熱心に見学していた(クリックすると拡大します)

もっとも500万バーツ、1000万バーツという金額はタイの人々にとっては日本人が感じる以上の価値があるはずです。そのため、日本の商品をそのままタイに持ち込むだけでは商売が難しいのは当たり前。だからこそ現地スタッフが開発した新商品「ダーウィン」が必要になったのです。

価格は、ほぼ500万バーツくらい。セキスイハイムの日本での1棟平均価格は3000万円くらいですから、大幅なコストダウンが必要とされます。そこで建材や資材、設備を現地調達すること、生産の合理化などで500万バーツという金額を実現したといいます。

ご存じのように、タイは基本的に熱帯性気候の国であり、地震はもちろん、実は台風も来ないという環境です。そのため、日本におけるような厳しい耐震基準や気密・断熱性、台風対策などといった厳しい要件は求められません。そうした点では、ハウスメーカーにとっては進出しやすい国だといえそうです。

構造躯体は日本と同じく鉄骨ユニットですが、これはタイでは有利に働くといいます。というのは木造ではシロアリ被害の心配から採用されず、ユニットを工場生産するため現在一般的な鉄筋コンクリート造より工期が非常に短くすむという利点があるからです。

このほか、人件費が日本より割安という点もコストダウンの要因の一つとなっています。では、次のページで具体的にどのような建物を供給しているのか、ご紹介します。
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