ガイドラインは、中古住宅の売買時の基礎的なインスペクションが対象
国土交通省の「既存住宅インスペクション・ガイドライン」は、その名の通り、中古住宅の売買時のインスペクションを前提としています。さらに、最低レベルである「基礎的なインスペクション」として、目視による確認を中心に、一般的な計測器(建物の傾きやひび割れの大きさを測るもの等)を用いた現況調査を対象としています。より専門的な検査機器を用いるなどのより詳しいインスペクション(耐震診断も含まれます)は、二次的なインスペクションとして、今回のガイドラインの対象にはなっていません。
検査は、対象部位ごとに次のような劣化状況の有無を確認することを基本としています。
・構造耐力上の安全性に問題のある可能性が高いもの
(例:蟻害、腐朽・腐食や傾斜、躯体のひび割れ・欠損等)
・ 雨漏り・水漏れが発生している、または発生する可能性が高いもの
(例:雨漏りや漏水等)
・ 設備配管に日常生活上支障のある劣化等が生じているもの
(例:給排水管の漏れや詰まり等)
ただし、目視可能な範囲が前提です。例えば、容易に移動できない家具などで隠れている部分については、目視できなかったことを報告するとされています。
客観性や中立性の確保についても、ガイドラインに盛り込まれている
消費者がインスペクターを選択しやすいように、インスペクターの情報(免許や検査項目の概要、料金体系等)をホームページなどで公開すること、実際に検査を行う検査人の情報(資格や実務経験、講習受講歴等)を提供することなどを、ガイドラインでは求めています。また、中立性を確保するためには、
- 自らが売り主となる住宅については、インスペクションを実施しない
- 検査する住宅において、仲介やリフォームを受託している、あるいは受託しようとしている場合は、その旨を明らかにすること
- 仲介やリフォームに関わる事業者から金銭的利益の提供や便宜的供与を受けないこと
インスペクションの依頼主にも、留意事項がある
一方、ガイドラインによると、中古住宅の購入を検討している人が、インスペクションを依頼する場合、いくつか留意事項があることがわかります。まず、依頼主自身が住宅所有者の承諾を取り付け、インスペクションに必要な住宅に関する基本資料を入手して提供する必要があります。また、インスペクション業務を委託する際には、書面により業務内容や検査人、中立性に関する情報などを確認します。検査終了後には、チェックリストや写真などを活用した検査状況を記した報告書を受け取ります。
ただし、基礎的なインスペクションには、瑕疵(かし。物件の隠れた重大な欠陥のこと)の有無を判定したり、瑕疵がないことを保証するものではないこと、建築基準法などに適合していることを判定するものではないこと、検査時点以降変化がないことを保証するものではないこと、などの留意点があることを押さえておきましょう。