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国民皆保険はどうなる? TPP加盟後の保険

TPPによって国民皆保険はどうなるのでしょうか? 国民皆保険はなくなり、個人で医療保険に入る、または、自ら保険を選ぶ時代が来るのでしょうか? グローバルの流れの中で、健康で、病気になっても安心できる社会であって欲しいものです。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

TPPは医療保険制度にも関係する

海外

海外での生活する時に気になるのは医療制度

太平洋を取り囲む環太平洋地域の国々の間で、経済の自由化を目的とする経済連携協定・「環太平洋パートナーシップ協定(Trans-Pacific Partnership)」。今「TPP」と呼ばれ、注目を集めている協定です。

TPPに加盟すれば、原則、関税はゼロになり、海外でも自由に企業が活動できます。医療分野で言えば、医薬品、医療機器の輸入、輸出です。現時点では、日本は医薬品と医療器具は輸入の方が多くなっています。サービスの点で言えば、医療保険が問題になります。

TPPに加盟した場合、加盟諸国の医療制度の影響を少なからず受けることが考えられます。まずは他の環太平洋の国々の医療制度を見てみましょう。

TPPに関連する国々の医療制度

■アメリカ
医療保障は民間保険が中心。国民の約6割は雇用主が任意で提供する民間医療保険、約1割は個人で医療保険に加入しています。障害者や高齢者は公的医療保険メディケアに加入し、メディケアは、連邦政府が社会保障税で運営しています。2007年の時点で無保険者が約15%もいます。低所得者の公的医療保険はメディケイドと言い、これも連邦政府で運営されています。

民間医療保険になると、年間保険料は自己支払いがあり、診療時にも自己負担があります。高額の場合は越えた部分ですべて自己負担になります。さらに、既往歴によっては医療保険に入れないこともあります。つまり、日本の民間医療保険みたいなものです。

■カナダ
国民医療保険制度をメディケアと言います。州などが保険者で医療保険税など州税財源で運営しています。メディケアは急性期の入院費用と医師の診察費をほぼ全額補償しますが、歯科、薬剤費などは対象外のため、実際は自己負担は約3割です。専門医や病院の診療を受けるためにはかかりつけ医の紹介が必要です。

■オーストラリア
国営医療制度であるメディケアは医療目的税を主財源とし、民間保険の併用を推奨しています。開業医を主治医に登録する義務があります。一般診療所の外来患者と主治医の紹介で専門医や公立病院を受診する場合は、その医療費はメディケアが支払いますが、公立病院の医師を指名できません。直接、公立病院に受診すると医師の指名ができますが、民間病院に受診するのと同じで、一旦すべて支払い、事後請求で診療費の入院なら75%、外来なら85%が返ってきます。

■韓国
国民皆保険制で、保険者は国民健康保険公団です。国民健康保険公団の補償は、入院8割、外来は5~7割で、自己負担の比率が高いです。保険対象外の高度診療も多いため、補完的な民間医療保険が普及しています。混合診療もOKです。患者紹介制度で、高度医療機関への紹介なしの受診は保険適用外で自費になります。

■シンガポール
国からの医療制度はなく、外来はほとんどが実費です。国民は、給料の何割かを国の管理下にある個人の口座に積み立てることが義務づけられています。「CPF(中央積立基金)」という強制積立貯金制度です。そこから医療費を出したり、あまり使わなければ、将来の年金になります。完全に個人主義です。

次のページでTPP締結後の日本の保険制度を考えてみましょう。
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