製品や農作物の動きを良くする協定・TPP
日本は貿易で成り立っています
そしてこの自由化は一般製品に対してだけではなく、、医薬品、場合によっては企業活動になりうる医療制度も例外でない可能性があります。すでに2国間の協定では、経済連携協定(EPA:economic partnership agreement)と自由貿易協定 (FTA:Free Trade Agreement)というものがあり、これらはフィリピン、シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、ASEAN、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルーで締結されています。その点では、決して新しい協定ではありません。今回のTPPでは、多国間で経済連携協定を結ぶことが考えられています。
TPPで問題になっているISD条項
現在TPPで問題になっているのは、「ISD条項」と呼ばれる「投資家対国家間の紛争解決条項(Investor State Dispute Settlement)」です。企業への干渉を防ぐためでもありますが、主に自由貿易協定(FTA)を結んだ国同士において、多国間における企業と政府との賠償を求める紛争の方法を定めた条項です。つまり、企業に損害が発生した時、企業が政府に対して損害賠償を請求することができるというものです。製品、食料品、農作物、保険、生活などの様々な面を考慮する必要があるため、TPPに賛成するか反対するかについての態度を決めるのは難しく、様々な議論がされています。
しかし、TPP交渉参加についてはどうでしょうか? まずは、話し合いの場に参加しないことには、TPPを締結するかどうか、日本に有利に協定をまとめることもできません。結局は交渉中に、賛成か反対かと決めたら良いわけです。現在の風潮として、日本は「No」と言えない気質があるため、交渉参加すると米国を始めとする他国の要求にそのまま「Yes」と言ってしまうのではないか……といった心配から、TPP交渉参加すら反対する声が多くなっているにも思います。それも1つの考えですが……。まずは、TPP交渉に参加してみるのも1つの方法という考え方もあるのです。
TPPで医療が自由化した場合におきうること
心配されているのが、公的医療制度についての自由化です。例えば、医療保険会社が今の日本の公的医療保険に進出することが可能になります。それによって、国民皆保険制度が崩れることが懸念されています。今の日本の国民医療費には税金が投入されていることをご存知でしょうか? 国民医療費をまかなう財源では保険料が約50%、税金が約40%、患者負担が約10%です。さらに国民医療費は国民所得の10%を越えていて、さらに増加傾向にあります。今のまま参入すれば、利益が出るのは難しいと考えられます。そのため、公的医療制度にTPPで介入される可能性は低いと考えられます。公的医療制度は社会制度の根幹ですから、これを企業が変えることは難しいと言えるからです。また、政府も公的医療制度はTPPの対象としないという方針です。
一方で、参入するならば、利益の出る形になりますので、高所得者用の高額な保険料で手厚い保険、低所得者用の保険料を抑えて、その分、給付制限や上限を行うなどの問題が生じる可能性があります。つまり、公的医療保険での格差が生じる可能性です。
では、政府は独自システムを盾に、公的医療制度をTPP対象にすることを拒否できるのでしょうか? その場合はISD条項を盾に、独自システムは関税と同じで、他国の企業から進出機会を逸したとして損害賠償を請求される可能性もないわけではありません。
さらに、混合診療についても問題になります。現在、日本では混合診療を原則禁止しています。混合診療とは、ある病気の診療に対して、公的医療保険の適用診療と適用外の診療が混在することを言います。つまり、混合診療禁止というのは、混在自体を禁止し、もし、両方が混在した場合は、公的医療保険の適用診療分も適用とせず、全体を適用外として自費診療にしています。混合診療を認めると、1人の医療に格差が生じる懸念が指摘されています。わかりやすく言うと、「お金を払うほど、よりよい医療が受けられる」という可能性です。既に病院の個室利用などで実感することがあるかと思います。お金があって高額な個室料を払えばホテル並みの病室に入院できるわけです。それが診療内でも行われることになると危機感を感じる人は多いのではないでしょうか。
TPPでは、混合診療が解禁になると予想されています。