N響メンバーの妙技と楽しいアンサンブルに酔いしれたコンサート
日本を代表するオーケストラの一つ、NHK交響楽団(通称、N響)。毎週日曜日21時よりNHK Eテレで放送されている『クラシック音楽館』でもしばしば紹介され、世界中からトップクラスの指揮者を招き繰り広げられる演奏を楽しみにしているファンも多いでしょう。そんなN響が普段とまた違う魅力を発揮するコンサートがあり、行ってきたのが2013年5月27日(月)に行われた『N響室内楽 「踊るウィーン」』。その名のとおり、普段の大編成のオーケストラではなく、少人数で指揮者もいない“室内楽”の演奏会です。果たしていつもの演奏とどう違うのでしょうか?
ソリストの妙技を堪能した前半
前半はモーツァルトを2曲。フルート四重奏曲第3番では、フルート首席の神田寛明さんが弦楽器と共に登場。普段のコンサートでは各奏者のソロを楽しめるのはほんの短い時間ですが、ずっと吹きっぱなしですので、その爽やかな美音に心地良く酔いしれることができました。続いてはクラリネット五重奏曲。クラリネットは当時、開発されたばかりのまだ新しい楽器で、モーツァルトがとても愛した楽器として知られます。こちらも、クラリネット首席奏者の松本健司さんが弦楽器を率いて登場。印象的だったのが楽譜に書かれた一音一音を慈しむように気持ちゆったりめのテンポで朗々と吹いていたこと。伸びやかさの感じられる演奏でした。
後半は、まろさん率いるメンバーがハーモニウムを迎えて「踊るウィーン」!
後半は、趣を変えて、“まろ”さんの愛称で親しまれる第一コンサートマスターの篠崎史紀さん率いる弦楽器メンバーが登場。そこに、ハーモニウム(足踏みリードオルガン)、ピアノをゲストに迎えた編成です。まずはドヴォルザークの『バガテル』を。“ちょっとしたもの”“つまらないもの”を意味するタイトルですが“新世界”などで知られるドヴォルザークらしい、しみじみとしたノスタルジックな旋律がハーモニウムのどこか懐かしい調べと調和します。
続いては、テーマの「踊るウィーン」ずばりで、ワルツ王として知られるヨハン・シュトラウスII世の3曲を。元々はオーケストラのための曲を新ウィーン楽派と呼ばれたシェーンベルク、ウェーベルン、ベルクが編曲。彼らは後に12音音楽というすべての音を等しく扱う音楽を生み出し新しい音楽の扉を開いたメンバーですが、ここでは、その傾向はなく、美しく(茶目っ気が感じられるものも)楽しい室内楽曲に編曲されています。
まろさんが若き日にウィーンで学んでいたこともあってか、ワルツのリズムは軽快で、全体の音楽もとても自然で、時にドラマティック。普段と違って指揮者がいない分、自由に奏者が各々楽しんでいる感じが伝わり、音楽は歓喜に満ちた、正に心躍る素晴らしいものでした。
それで逆に改めて思ったのが、こうした優れた奏者が、普段はソリストではなく、オーケストラの1メンバーとして力を合わせて曲を演奏しているってすごいなぁ、ということ。
今回の公演を聴けた幸運な皆さんは、今後、N響のコンサートを聴く際に、また更なる魅力を感じるのではないかと思いました。
N響の魅力を室内楽というカタチで改めて感じた一夜となりました。
【関連リンク】
NHK交響楽団ホームページ
http://www.nhkso.or.jp/index.php