退廃的で色っぽい中年ヤクザと、子悪魔的な少女が魅力的
■監督
篠田正浩
■主演
池分良、加賀まりこ
■DVD販売元
SHOCHIKU Co.,Ltd.
1964年に、松竹の配給で公開された映画「乾いた花」。
原作は、石原慎太郎の小説です。
第一回目の映画芸術ベストテンで、邦画第5位に選ばれました。
■あらすじ
刑務所を出所したヤクザものの村木(池部良)は、ある賭博場で美しい少女冴子(加賀まりこ)と出会う。
その後、屋台で彼女と再会し、冴子に大きな勝負ができる賭場に行きたいとせがまれ、連れて行くが、そこで殺しと麻薬だけで生きているようタチの悪い男に目を付けられてしまう……
■おすすめの理由
まず、なんと言っても、日本でもこんなに渋いニヒリズム、デカダンスという言葉の似合う、フランス人のような俳優がいたんだ……と池部良さんのかっこよさに目を奪われます。
爽やかな好青年の役を知っていたので、真逆なヤクザの男役はとても惹かれるものがありました。
映画全般、白黒で美しく、スタイリッシュな映像もきれいです。
ミステリアスで、妖精のような、小悪魔のような魅力を持つ加賀まりこさん演じる少女に心を奪われて行く、中年のやくざ。
監督はさわやかな池部良さんの笑顔を見て「うそつけ! 悪魔的なものを持っているだろ」と思っていたとか。
そんな池部さんが演じる、退廃的で色っぽくて、危険な中年ヤクザが魅力的です。
ちょっと突き放すようなセリフを言う、キスシーンもぐっときます。
こんな恋愛もあるのだ……とためいきをつきたくなるような「乾いた花」。
公開直後、配給側かたは難解だと8ヶ月お蔵入りになり、反社会的(ヤクザや賭場を描いたからか)成人映画になったとか。
今ではもっと過激な映画を子供達が見ているのに……、そういう時代だったのだなと思いながら観ると、より感慨深いものがあります。