2人の対立から和解へと変化していく姿が好ましく映る
『夜の大捜査線』
■監督ノーマン・ジュイソン
■主演
シドニー・ポワチエ、ロッド・スタイガー
■DVD発売元
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
■おすすめの理由
この映画は、米南部の田舎町で起こった殺人事件を軸に、都会のエリート黒人刑事ティップス(シドニー・ポワチエ)と地元の白人警察署長(ロッド・スタイガー)が対立する姿から人種差別の根深さをあぶり出していきます。
とにかく2人の演技合戦がすごいのです。
駅で列車を待っていたティップスは、黒人だというだけで容疑者にされて連行されます。
そして身分が分かると無理矢理捜査に協力させられる羽目に……。
なんともめちゃくちゃな話です。
その時署長は「おまえさん街では何て呼ばれてるんだい」なんてティップスを侮辱します。
するとティップスは「みんなは俺のことを“ミスター・ティップス”と呼ぶぜ!」
と怒りを込めて言い返します。
2人の心の火花が散る名場面です。
2人は対立しながらも事件の核心へと迫り、やがて意外な真犯人を割り出します。
この映画は推理ドラマとしての面白さもさることながら、2人の対立から和解へと変化していく姿が好ましく映るのですが、署長が「ミスター・ティップス」と言えないまま2人は別れていきます。
アカデミー賞では作品賞のほか、スタイガーが主演男優賞を受賞しましたが、
この場合、ポワチエと2人一緒に上げたかった気がしますね。
音楽はクインシー・ジョーンズで主題歌をレイ・チャールズが歌っています。
最後に後日談を一つ。
ポワチエのアメリカ映画協会名誉賞の受賞式に、パーティ嫌いのスタイガーが珍しく出席し
「今日は映画の中ではどうしても言えなかったセリフをいいに来たよ。“ミスター・ティッブス”」と見事に決めてくれました。