年金/国民年金の仕組み

国民年金は払ったほうがよい? 老後の意外な落とし穴

自営業の人や収入が多くなり扶養を外れてしまった人などは、原則として国民年金第1号被保険者となり、毎月保険料を納めなくてはなりません。しかし、この国民年金保険料を支払っている人が少ないと時々話題になります。支払わなければ、支払わなかった分だけ年金が少なくなる仕組みになっていますが、この仕組みによって老後に意外な落とし穴があるかも? そんな危険性についてお伝えしたいと思います。

綱川 揚佐

執筆者:綱川 揚佐

年金ガイド

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65歳から遺族年金のもらい方が変わる。その時……

先日、年金相談窓口にもうすぐ65歳になるという女性(昭和33年12月生まれ)が相談に見えました。お話をうかがうと、現在遺族年金を受け取っているとのこと。65歳から年金の受け取り方が変わると聞いたので、どう変わるのか、いくらになるのかを尋ねにきたとのことでした。
65歳からの年金を確保するために国民年金は納付しよう

65歳からの年金を確保するために国民年金は納付しよう

奥様(相談者)は現在年間約120万円の遺族年金を受け取っているとのこと。ご自身は結婚前に3年くらい勤務していたが、その後は専業主婦とのことでした。国民年金は、ご主人の扶養になっていた期間は第3号被保険者として加入していましたが、ご主人を亡くした後は保険料を支払うことができず、免除の手続きもとっていなかったようです。友人から、遺族年金と自分の年金はどちらかしかもらえないから、国民年金は支払っても無駄になってしまうという話を聞かされたともおっしゃっていました。

65歳以降の遺族年金の受け取り方については、以前「旦那様を亡くされた奥様。私は遺族年金をもらえるの?」の記事でお伝えしました。65歳前との違いは、

(1)遺族年金か自分の年金かの選択制ではなくなる
(2)遺族年金に加算されていた中高齢寡婦加算がなくなる(生年月日によっては、遺族厚生年金の加算給付の1つ「経過的寡婦加算」がその生年月日に応じて加算される場合がある)
(3)自身の老齢厚生年金が優先的に支給され、遺族年金から自身の老齢厚生年金相当分(基金代行額含む)が減額される
(4)自身の老齢基礎年金が支給される


ということになります。

さて、この人の遺族年金は65歳からどうなるのでしょうか。
 

国民年金を払っておけばよかった! 遺族年金の意外な落とし穴

奥様(相談者)の現在の遺族年金額は年額約120万円。この中には65歳まで加算される中高齢寡婦加算約59万円が含まれていますので、65歳以降の遺族年金本体の金額が約61万円ということになります。経過的寡婦加算は昭和31年4月2日以後生まれの方は対象外ですので、加算されません。

また、先ほどの説明の(3)と(4)の通り、奥様ご自身の老齢厚生年金と老齢基礎年金が支給され、遺族年金から奥様自身の老齢厚生年金相当額分が支給停止となる(差し引かれる)わけですが、金額を調べてみると、老齢厚生年金が年額約5万円、老齢基礎年金が年額約35万円でした。

合計の受給額としては、
約61万円(遺族年金)-約5万円(支給停止分)+約5万円(老齢厚生年金)+約35万円(老齢基礎年金)=約96万円(年額)

ということになります。なんと! 65歳前よりも年金額が減ってしまうのです。

これは、ご自身が国民年金保険料をあまり支払ってこなかったため、老齢基礎年金が低額となってしまうことによるものです。

あと数カ月でも国民年金に任意加入をして保険料を支払ってはいかがかと提案はしましたが、それでも増やせる年金額は少額であり、焼け石に水となってしまいそうです。奥様はがっかりしてお帰りになりましたが、こればかりは決まりごとなので私にはどうすることもできませんでした。

遺族年金に限ったことではありませんが、老後に少しでも安定した生活が送れるよう、国民年金はぜひ支払っておきたいところです。免除が受けられる方は、免除の手続きだけは最低限行っておくようにしましょう。

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