離婚協議書という選択
このような制約がある中で、私が選んだのは「離婚協議書」でした。日本の夫婦は3組に1組が離婚をします。そのうち、9割近くが協議離婚です。つまり、夫婦当事者間による話し合いの離婚です。一方で、裁判所が関与するのが、裁判離婚や調停離婚です。行政書士は裁判離婚や調停離婚に関与することはできません。
統計資料をみると行政書士が扱えない裁判離婚や調停離婚はごく少数なのです。勝機があるかもしれないと思いました。
もっとも、協議離婚ならば行政書士がすべて関与できるかというとそうではありません。夫婦財産や子に関して紛争になっている場合や、一方から依頼を受けて相手方を説得すること、夫婦の仲裁をすることなどはできません。
行政書士はあくまで書類作成が仕事です。ですから、当事者間でおおよその合意ができている協議離婚だけを扱うことができます。
割合は決して多くないでしょうが、合意が成立した上で書面にしておきたいという夫婦は、必ずいるはずだと思いました。協議離婚という母数が多いので、行政書士が取り扱えるような案件もあるはずだと考えました。
弁護士との競争は? 勝算は?
競争相手としての弁護士ですが、知り合いの弁護士達に聞いても、離婚事件はあまり人気がありませんでした。当事者が感情的になりやすく、時間を要し、利益性も低いようでした。確かに、今でも、大手法律事務所で離婚を取り扱っている事務所は多くありません。当時、弁護士は、協議離婚において、離婚交渉を行いその結果とし離婚協議書を作成することをしていました。しかし、依頼を受けて離婚協議書作成だけを行う弁護士事務所はほとんどありませんでした。
まさに隙間を狙ったニッチ戦略です。
私は、弁護士のような権限はなく、アドバイスなどができないとしても、勉強だけはしっかりとしようと思いました。弁護士会の地下の売店の法律書売れ筋ランキングなんかもチェックして、弁護士が読んでいる離婚関連書籍を買い求めました。
また、行政書士が扱えない案件と判断した場合、弁護士を紹介する必要もあります。そこで、司法試験受験時代の先輩の弁護士達に連絡がとれる体制も整えました。
こうして着々と準備を整えていったのです。
懲りずにホームページを
SEO対策の観点から、離婚専門のホームページを作成することにしました。「離婚協議書」というキーワードで検索上位を狙うためです。この離婚のホームページは比較的簡単につくることができました。半年間、ホームページの作成に苦労したのは無駄ではなかったようです。離婚のホームページは2004年7月1日に公開できました。
こうして、離婚協議書の作成という仕事を私は主軸として選んだのです。
いつも記事の終わりは、次回の予告として暗雲たる未来をちらつかせてきましたが、今回は違います。思わぬSEOの副産物で未来が開けることに……。明るい未来のお話です。