森ビルの住宅(レジデンス)を選ぶということ
「世界の富豪に買ってほしいと財閥デベは試行錯誤しています」先日、こんなマンション業界の動向を森ビル住宅事業部長の大場秀人執行役員に投げかけてみた。返ってきた答えはこうだ。「誰々に所有してほしいといった思いもなくはないが、できることなら自宅として使っていただけるオーナーに買ってもらいたいという気持ちのほうが、私たちには強い」。いかにも、自ら管理を手がける森ビルらしい回答ではないか。彼らは現在、25棟(戸数にして約3,600戸)のレジデンスを運営している。同社は2010年、「元麻布ヒルズ」以来8年ぶりの分譲プロジェクト「平河町森タワーレジデンス」(一部住戸)を発売。以後、昨年(2012年)は「アークヒルズ仙石山レジデンス」(同)を、今年(2013年)は渋谷区神山町で「Case」を分譲中だ。
その過程において、賃貸と分譲では顧客層の志向の違いが予想以上であることに気付いたのではないだろうか。高級マンションを購入する人は、とりわけ資産性を重視する。そこで過ごす「コト」も大切だが、何よりも資産価値の下がりにくい物件(「モノ」)を選びたいという発想。極端な話、利用価値は二の次、というケースさえ有りうる。
森ビルは、住宅事業を「MORI LIVING」なるブランド名で展開している。物件一覧が掲載されたパンフレットの冒頭部分には、こんな挨拶文が記されている。
MORI LIVINGは、高級な住宅を意味するだけの名前ではありません。それは森ビルが提案する、東京のあたらしいライフスタイルの名前です。東京や日本という枠組みを超えて発想した、比類のない価値を持つ住宅。世界中から集まった人々がつくり、育てる、ユニークなコミュニティ。(中略)私たちは、外見やマテリアルの高級さだけを意味する「ラグジュアリー」とはその原点から違う発想を持っています。上質な時間が生み出す上質な体験。MORI LIVINGを選ぶということは、ここでしか生まれない物語を選ぶということです。
「MORI LIVING」のなかでも、ひときわ人気を誇るのが「六本木ヒルズレジデンス」。今春、その「六本木ヒルズ」は10周年を迎えた。