演歌・歌謡曲/演歌・歌謡曲 イベント案内

新開地音楽祭2013 山本リンダ ミッキー吉野

日本各地に数多くある音楽祭、フェスの中でも飛びぬけてディ―プな新開地音楽祭を徹底取材。寂れた街中にもうけられた数々のステージで奏でられるのはいなたいブルース、ロック、そして歌謡曲。お客は5、60代を中心に家族連れ、バンドマン、労働者風、ホームレス……と、お洒落イメージとはかけ離れたB面の古き良き神戸を具現化している。

中将 タカノリ

執筆者:中将 タカノリ

演歌・歌謡曲ガイド

新開地ってどんな街?

今回のテーマは5月11日、12日に開催された第13回神戸新開地音楽祭。関西以外では地名自体ご存知ない方も多いだろうから説明しておこう。

新開地は神戸市の歓楽街。戦前から1960年代まで長く神戸の中心地として栄えたが、さまざまな要因が重なって近隣の三宮、元町に地位を奪われた。衰退とともに治安の悪化が著しく、一時はソープランド、ヤクザ事務所、串カツ屋に段ボールハウスばかりとなった暗い過去をもつ。阪神・淡路大震災の前後からようやく復興の兆しが見え、現在ではレトロな下町、住宅地として新たな機能が注目されている。とは言えディ―プさは健在。

と言ったところか。

新開地音楽祭のディ―プな特徴

新開地音楽祭はそんなディ―プな街で毎年開催される、チケットフリーの市民参加型音楽イベント。湊川公園、商店街、地下街などに設けられた大小8ヶ所のステージから、アマチュア、プロ入り乱れて街中にガンガン演奏を響かせる。
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新開地音楽祭MAP


なにより特徴的なのは年齢層の高さと所属の幅広さだろうか。筆者の見たところ出演陣は40代~60代が中心、観客はさらに高齢で家族連れ、バンドマン、労働者風、ホームレスとバラエティ豊富すぎる顔ぶれだ。ステージ前でエッサッサ調で踊るおじいちゃんが何人も確認できる。

もちろん演奏される音楽も、自然と70年代ロック、ブルース、歌謡曲、ジャズ、フォークなど高齢者好みのナンバーが中心となっていく。過去のメインゲストがムッシュかまやつ、尾藤イサオ、真木ひでと、泉谷しげる、原田伸郎ということからもなんとなく雰囲気がお察しいただけるのではないだろうか。

2013年のメインゲストは山本リンダ!

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第13回神戸新開地音楽祭ポスター

そして2013年のメインゲストは山本リンダ。新開地音楽祭のブッキングセンスここに極まれり! "ウララ~♪"の時代から変わりないプロポーションを維持しつづけ、近年もCDリリースなど活発な活動をくりひろげている彼女。筆者としてもテレビ以外で拝見したことがなかったので、なにとぞ目に焼き付けておきたい大歌手の一人だった。筆者は今回、11日~12日と連日の取材をおこなったが、趣味と仕事を兼ねることが出来て本当に役得で充実した時間を過ごすことができたと思う。
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中将タカノリ流新開地ファッション



11日は雨の中

11日はあいにくの雨。
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新開地本通り商店街のステージ

ロックなオヤジバンドがイーグルスの名曲『ホテルカリフォルニア』を「ホテル新開地~♪」と替え歌する絶妙に湿った空気の中、新開地の街を歩いてゆく。
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地下街のステージ

 

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雨のせいか少し人出は鈍い

商店街をずっと山側(神戸では北を山側、南を浜側と呼ぶ)に歩いていくと湊川公園。
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湊川公園

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櫻正宗

公園内には小物のバザーや地元飲食店の屋台、神戸は灘が酒どころなので櫻正宗の直販所なんかも出店している。音楽よりもむしろ飲みたいくらいの勢いで酒盛りする人もいて非常ににぎやかだ。ステージにくぎ付けになるばかりでなく、いろんな楽しみ方ができるからこそ地域に愛され、回数を重ねていけるのだろうか。

ここで偶然に出会ったのがインターネットラジオ『もてラジ』の主宰者で市民生活にくわしい戸田健太郎さん。
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市民生活にくわしい戸田健太郎さん

毎年に近い頻度で遊びに来ているが、約束し合わなくても誰かしら友人に出会えるのがこのイベントの個人的楽しみでもある。音楽、アート、ライター、飲食関連など業種は様々だが、関西中のディ―プな人々を吸い寄せる魅力が確実に存在するのだろう。

こってこてブルース ホルモンキング

お客さんばかりでなく、出演者にも友人や知り合いはちらほらいる。代表的なのが姫路のこってこてな(和風な意味で)ブルースバンド『ホルモンキング』のボーカルKYOKOさん。
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連年出演する姫路のブルースバンド『ホルモンキング』

関西弁丸出しの、下品だけどハートフル、ソウルフルなスタイルは多くの人の心をつかみ、ホルモンキングを観るためだけに新開地音楽祭にやってくるファンも数多い。湊川公園脇の小さなステージではあるが、今年も数百人の観客に囲まれて圧巻のステージングを披露していた。

山本リンダの登場 これぞ"芸能人"

そんなこんなでお酒と音楽を楽しんでいたらあっと言う間に日が暮れてメインゲストの山本リンダが始まる時間。
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山本リンダが出演する湊川公園メインステージ。残念ですが肖像権保護のため修正を入れてます。

他のステージはすべて終演しているので数千人の観客がメインステージに押し寄せている。「リンダ~~!」と絶叫する声があがるのでハッと周りを見渡せば、目を爛々とさせた年輩の男性やスナックのママさん風のいかにもコアなファンがそこここに。「やっぱり他の音楽フェスとは一味ちがうなぁ~」と一人うなずいていると程なくして山本リンダが登場した。

バックバンドもダンサーも付けず、たった一人カラオケ音源に激しく身をくねらせ『じんじんさせて』。続いて『燃えつきそう』『こまっちゃうナ』。昔のイメージと寸分違わぬプロポーションや独特の激しいアクションはもちろん、なにより素晴らしいのはその浮世離れした"芸能人"オーラ。庶民化の進んだ最近の若い歌手ではこうはいくまい。さらにさらに遠藤実や都倉俊一など大作曲家との制作エピソードや売れなかった時期の苦労話を軽快にMCに盛り込むあたりなんか……あぁ歌謡曲!ってこそばゆい感じでニヤニヤしてしまうではないか。

ともかく筆者を含め、観客をうまくペースに引き込みながら曲目は進み、2012年にリリースした新曲『恋は花火か 地の雪か』を披露した後、ふたたび 『どうにもとまらない』『狂わせたいの』 『ねらいうち』と怒涛のヒット曲。

ここまでが予定曲で、沸き起こる歓声に包まれながらいったんステージを降りたものの、テンポよくアンコールに舞い戻った山本リンダ。ドレスの上に白いファーをまとって 『恋は花火か 地の雪か』のB面『愛に生きて』 。とどめにまた『ねらいうち』。ほんの3、40分でお腹いっぱいの濃厚なひとときだった。

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中山先生と

全部終わったのは9時前くらいだったろうか。もう少し飲み足りないので、近くの赤だるまというカラオケスナックに入って尾形大作の『無錫旅情』を歌っていると、常連の中山先生という方から「中山大三郎(『無錫旅情』などで著名な作曲家)と言えば今日の山本リンダの曲も手がけていましたね。中山大三郎とは東京で飲んだことがあるんです。同じ中山同士盛り上がりました。」という通なエピソードを教えていただけた。新開地……濃厚な街です。

 

12日は快晴!

翌12日はうって変わって快晴。
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新開地本通り

昨日までのジメッとした空気はなく、各ステージの観客も何割か増しで多いようだ。
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新開地本通りのステージ

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湊川公園

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公園内のステージで演奏する兵庫県のネオ・ロカビリーバンド『THE BORNS』

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革ジャン×革パンで阿波踊りを披露する徳島のポップなパンクバンド『ザ・マネーショット』


ほうぼうのステージを見まわって歩いたが、感じたのはロカビリー系、パンク系のバンドが多いこと。しかもけっこうウケてる。一般のライブハウスシーンでは隅に押しやられがちで、どマイナーな印象すらあるこれらの古典ロックジャンルがこうまで受け入れられている新開地音楽祭の懐の深さよ。

もちろんバンド側も高齢のお客さんに向けてのサービスを忘れていない。公園内のステージで演奏していたネオ・ロカビリーバンド『THE BORNS』は西田佐知子の名曲『コーヒールンバ』をカバーし、徳島から遠征してきたポップ・パンクバンド『ザ・マネーショット』は鐘を打ち鳴らしながら阿波踊りを披露してくれた。こういうの……嫌いじゃないです。

12日の大トリは土岐英史スペシャルプロジェクト 

12日の大トリは『土岐英史スペシャルプロジェクト』。バンマスの土岐英史はジャズサックスの大御所で山下達郎や坂本龍一のバッキングでも著名な方だが、この演歌・歌謡曲コーナーを担当する筆者にとっての本命はやはりキーボードで参加しているミッキー吉野。なんてったってザ・ゴールデンカップスでゴダイゴ!

ユニットの演奏が始まったのは8時頃。暑すぎた一日の最後にグルーブ感のあるフュージョンな響きが心地いい。ジャズ好きにも、ロック好きにも、テクノ好きにとっても嬉しいサウンドではなかろうか。ミッキー吉野のヴォコーダーさばきなんてもはや神業。

構成としても、アドリブをまじえた巧妙かつラフなステージングでじわじわと場が温まってきたところですかさずゴダイゴの『モンキー・マジック』のカバーを投入したのはさすがだった。あんまりインストを聴きなれず、集中力が切れかけてきたお客さんにとっても絶好のアプローチになっただろうし、筆者自身、集中力がグッと高まってラストまで個々のプレイヤーのソロ、ハーモニーを堪能することができた。
 

来年はゴダイゴ?

演目が全部終わると主催の地元商店街関係者がステージに上がり、「今年はミッキー吉野さんに出てもらったんで来年はゴダイゴでお願いしますよ~予算とかあんまりないけど……」と軽すぎるノリで直接交渉。ミッキー吉野は大人の対応で、かわしたようなかわさないような微妙な返事をしていたが果たして結果はどうなるだろうか。筆者は「そんな話もあったなぁ」と記憶の片隅に留めておく程度で、あまり期待せず2014年の新開地音楽祭を待つことにしたい。どっちにしても楽しいことに変わりはないだろうから。

新開地音楽祭の公式サイトはこちら

演歌・歌謡曲ファンのみならず、すべての音楽好きにぜひ一度足を運んでもらいたいイベントだ。
 

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