オープン・エア・シアター上演『ジーザス・クライスト・スーパースター(Jesus Christ Superstar)』より。Declan Bennett as Jesus and the Apostles, Photo by Johan Persson
劇聖シェイクスピアの故郷であるのは誰もが知るところですが、実は“世界初のミュージカル”と位置付けられているのも英国産。1728年にロンドンで初演された音楽劇『ベガーズ・オペラ』です。20世紀に“ミュージカル”というジャンルが確立されてからも、イギリスは様々な名作を生みだし、米国と並んで世界のミュージカルを牽引してきたのです。
この国でミュージカルを楽しむなら、どんなポイントを抑えておけばよいでしょうか? 今回はロンドン在住の演出家・市川洋二郎さん(『Tell me on a Sunday~サヨナラは日曜日に』)へのインタビューや現地観劇レポートを交え、初めての方でも素敵な観劇体験を実現するための基礎知識をお届けします。ぜひお役立てください!
スペシャル・ミニ・インタビュー
英国在住演出家・市川洋二郎さん
「演劇都市としてのロンドンの面白さ」
観客には面白い英国の劇場界ですが、演出家として日本人が生き残っていくには“毎日が戦い”だという市川洋二郎さん。そんな中で彼が武器としているのが、日本的な美意識のもとで不要な要素をそぎ落とし、本質を見出す“シンプリシティ”。ロンドンでの演出作『From Up Here』では一本のロープを橋に見立て、人々の出会いと葛藤のドラマを描いたそうです。
「ロンドンという場所はすごく面白くて、演劇が自分たちの文化であるという誇りをもって守ろうとする一方、それに縋るだけでなく、ヨーロッパやアメリカ、東洋の演劇の流れに常にアンテナを張っている。ここには世界各地の最先端の演劇が流れ込んできており、刺激的なのです」
――そんな中で、最近の英国のミュージカル事情をどうご覧になっていますか?
「近年はブロードウェイ作品に押されている感がありますね。今年のオリヴィエ賞も、原作こそ英国映画だけどブロードウェイ産の『キンキー・ブーツ』の一人勝ちでした。確かにイギリス版の『キンキー~』キャストは演技を掘り下げていて非常にいいのですが、『Bend It Like Beckham』のような素晴らしい英国産ミュージカルが評価されなかったのは残念でした。
いっぽう、こちらではウェストエンド(ロンドンの商業演劇街/商業演劇界)からちょっと外れた場所でやっているものが面白かったりします。Regent’s ParkのOpen Air Theatreで上演している『Jesus Christ Superstar』や、ヒット作『Matilda』の創作チームが手掛けてOld Vicという劇場で上演している『Groundhog Day』はこの夏の注目作だし、Menier Chocolate Factoryという劇場では『Funny Girl』のように、後にウェストエンドに移っていくような話題作が数々上演されています」
――そういった“面白い作品”に出会うには?
「先ほど挙げたような劇場でどういうものをやっているか、例えばWhats’s On Stageのような演劇サイトで、アンテナを張っておくといいですよね。ロンドンにいらっしゃる直前だけでなく、常に何が話題かを知っておくと、面白い舞台に出会えると思います」
『The Red Candle-Mermaids In The East』
「はい、小川未明の『赤い蝋燭と人魚』をベースとした『The Red Candle -Mermaids In The East』という作品を、ブルーネル博物館のThe Grand Entrance Hallで11月4日から上演する予定です。改装再オープン式典の正式招待作品で、エドワード王子もご来場の予定ですが、公演は3週間ありますので日本の皆さんもぜひ、いらして下さい!」
*次頁で実際に英国(ロンドン/地方)でのミュージカル鑑賞のための基礎知識をご紹介します!