子どもに海外で教育を受けさせるための「教育移住」
海外移住と聞くと、仕事の都合での海外赴任、最近ではリタイア後のセカンドライフを日本以外の国で過ごすロングステイを思い浮かべる方が多いと思います。そのほかにも介護のために移住する介護移住や脱サラして外国での起業や現地で就職しての移住、国際結婚による移住などもあります。数多くの移住方法がありますが、ここ最近にわかに注目を集め始めているトレンドが「教育移住」です。耳慣れない言葉かもしれませんが、教育移住とは、「子どもに海外で教育を受けさせるために移住をする」ことをいいます。
終身雇用制の崩壊と就職難、東日本大震災による原発事故と希望の見えない不透明な日本に我が子の未来を託してもいいのか、国際的な視野を身につけ国境を越えて活躍できるような子になって欲しい、という思いを持つ親が増えてきています。しかし、日本の教育環境下では世界で通用する力をつけるのは難しいのが現状です。
グローバルな子どもに不可欠な「英語」
グローバルな子どもに育てるために必要なことは、まず英語の習得です。子どもの場合、言語習得は大人と比べて比較的容易です。英語を身につけさせたいだけであれば、小学校での英語授業に加え、英会話スクールに通わせる、自宅での学習、海外旅行へ行き生の英語に触れさせるなど、英語に積極的に触れられる環境を作ることで上達させていくことができます。しかし日本では、学んだ英語をアウトプットできる環境がほとんどありません。吸収する環境は整えられても、子どもの英語レベルが確認できる場は限られてしまいます。そうなると英語を身につけさせたい場合、学ぶことと話すことを一度に行える場としてインターナショナルスクール(以下、インター)に通わせることを考えるでしょう。ですが、日本国内にあるインターは各種学校という扱いになるため、日本の義務教育を受けたことになりません。それなら、いっそのこと日本を出て異文化の中で育ててみるのもいいかもしれない、という選択肢が生まれてくるのは自然な流れなのかもしれません。
現地のインターで国際感覚を養う
それでは、現地のインターに通うことで得られることはなんでしょうか。まず、英語の習得。日本人学校ではなくインターに通うのですから、コミュニケーションはもちろん英語です。また、さまざまな国の生徒と接することで英語以外の言語との関わりが生まれます。多言語と関わりを持つということは、異文化や多くの価値観と出会うことになります。十人十色という言葉があるように、国によって習慣も文化も違うので、旅行しただけではわからない、実際に暮らしてみることでしかわからないことがたくさんあります。その中で学び暮らし経験を積むことで、ドメスティックないわゆる「日本的価値観」でなく、広い視野を持った子どもに育てることができます。
また、国際的な人脈を広げることもできます。臆さず自分の意見をいえる子どもにもなるでしょう。子どもの可能性は未知数です。思わぬところから芽が出てくる可能性もあります。その芽を出すためのベースを作ってあげたいと考えたとき、教育移住を視野に入れることも選択肢としてありなのかもしれません。
バイリンガル、国際的な視野、広い価値観の獲得という言葉には、閉塞感を抱えた日本において子育てをする親には魅力的かもしれません。しかし、メリットにばかり目を向けるのではなく、子どもを海外で育てることで生じるデメリットもしっかりと認識する必要があります。
次回は、メリットとデメリットについて、もう少し具体的にお伝えしたいと思います。