住宅設計・間取り/住宅設計・間取りのテクニック

ホームワーキングの夢を叶える、24坪に離れのある家

いつかは自宅で仕事をしたい。誰でも一度は考えたことのある夢ではないでしょうか。将来の独立を想定し、自宅に仕事場としての「離れ」を設けた家です。

塩野 哲也

執筆者:塩野 哲也

空間デザインガイド

3月下旬、桜が咲き始めた頃。将来の独立をふまえ自宅に「離れ」の仕事場を設ける夢を実現した「小松川の家」(以下・K邸)が完成しました。その願いを叶えた田中工務店(小岩)代表・田中健司さんに、この家のポイントを伺いました。

敷地わずか24坪に離れをつくる

外観

親水公園からみたK邸(茶色の家)。都心部にありながら、緑あふれる環境です。

模型

K邸の模型。「離れ」は母屋と一体になっているものの、離れに見えるよう工夫しています。

K邸の敷地面積は24.63坪。この限られた面積の中に「離れ」としての仕事場を作ることが求められました。歯科技工の仕事は削り屑や振動が出るため、居住空間とは切り離したかったのです。様々な案を検討したすえ編み出されたのが、建物の構造を一体としながら「離れ」を作るプランです。1階は駐車場を兼ねた広いピロティになっていて、母屋の玄関の向かいに、仕事場の玄関があります。一見建物は離れているように見えますが、2階で一体となっています。このアイデアによって、親水公園に面した一番気持ちのいい場所に「離れ」を配置することができました。

一度母屋の外に出てから、離れの仕事場に入るというのが大切なポイントです。わずかな距離であっても、日常から仕事モードに切り替えるための「儀式」となるでしょう。この2つの玄関は木製ポーチでつながっていて、時にはスリッパのままでも移動できそうです。ちなみにポーチに使われた天然木「セランガンバツ」は、インドネシア産の耐候性の高い木で、防腐剤を使わずに長持ちするため、公共施設での使用実績も多い材料です。
玄関

玄関部分。右側が「離れ」の仕事場。その向かいは母屋の玄関。左は物置の入り口です。

たっぷりした物置と玄関脇収納

クローゼット

物置の勝手口を入ると、玄関までの通路がクローゼットを兼ねています。

玄関まわりでもう一つ見逃せないのは、勝手口も兼ねた「物置」と「玄関脇収納」です。物置は、屋内には保管しにくい様々なものを置いておけます。物置の奥には母屋に入る勝手口があり、屋内外両方から使えます。その扉から玄関につながる通路の両脇は、たっぷりした玄関脇収納になっています。1階の玄関まわりに収納を設けるプランは、田中工務店の実例でも増えているそうです。特に子どものいる家では、コートや帽子、外用の玩具、スポーツ用品、雨具、園芸道具、自転車、スーツケースなどなど、屋内にしまうには面倒なものが沢山あります。また外出着を中に持ち込まないことで、花粉症対策の効果もあります。

全景

2階のキッチンからダイニング、リビングを見る。

むかで

小上がりの和室に設けられた「ムカデ収納」。

1階にたっぷりした収納をとることで、リビングのある2階の収納は、テレビ台をかねたリビング収納や食器棚など、日常に必要なものに絞り込み、生活スペースを最大限とっています。とはいえ普段は使わない細々としたものをしまうため、小上がりになった和室の下には「ムカデ収納」を備えています。田中さんの発案により生まれたムカデ収納は、収納箱の下にキャスターが付いていて、床上を滑るように引き出せます。シンプルな仕組みで、大きな収納量を確保できるアイデアです。

次ページ……家づくりの目標を明確にすることが夢を現実にする。

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