スイス/スイスの鉄道旅行

スイスの氷河特急、グレッシャー・エキスプレス(2ページ目)

スイスを代表する絶景列車と言えば、グレッシャーエキスプレス(氷河特急)。スイスを代表する観光地、ツェルマットとサンモリッツ(またはダヴォス)を直通で結ぶ特別列車です。列車は数々の橋やトンネルを越えながら、スイスの山深い地域を縫うように走ります。平均時速は約35キロ。「世界で最も遅い特急列車」と呼ばれる由縁です。スイス3大名峰をめぐるのにも便利な、移動と観光を兼ねた絶景列車です。

和田 憲明

執筆者:和田 憲明

スイスガイド

沿線のハイライト

サンモリッツからツェルマットまで距離にして約270キロ、8時間の行程になります。急峻な山、花に彩られた牧草地。沿線に点在する小さな可愛い数々の村。全区間乗車しても決して飽きることはないでしょう。ここでは氷河特急のハイライトをいくつかご紹介します。

■ランドヴァッサー橋
ランドヴァッサー橋

橋を通過した後はすぐにトンネルの中に 画像提供:スイス政府観光局  www.myswiss.jp

氷河特急は、サンモリッツからツェルマットまでの間、合計291ヶ所もの橋を渡ります。中でも有名な橋がランドヴァッサー橋。重厚感を漂わせる石造りの橋で、その高さは65m。ランドヴァッサー川が橋のはるか眼下に流れています。

この沿線は付近を通るアルブラ峠にちなみ、アルブラ線と呼ばれます。鉄道の敷設工事が始まったのは1898年。今から115年ほど前のことで、工事は厳しい難所を次々と克服しながら進みました。

ランドヴァッサー橋をはじめ、約400mの高度差を5つのループトンネルで克服するなど、当時の鉄道技術の総力を結集して完成した路線です。2008年にはアルブラ線は周辺の景観と合わせ、世界遺産に登録されました。

ツェルマット/クールからサンモリッツに向かう列車の場合、ティーフェンキャステルTiefencastelの駅を過ぎればそろそろカメラの準備をしましょう。やがて進行方向の右手前方に橋が姿を現し、気の早い乗客はカメラを手にそわそわとしだします。

反対方向の列車に乗った場合は、フィリズールの駅を出発または通過して、最初のトンネルを出たらすぐに橋の上です。カメラを構えるなら、進行方向に向かって左側。列車は橋の上をあっという間に通り過ぎるので、シャッターチャンスを逃さないようにしましょう。

■スイスのグランドキャニオン
スイスのグランドキャニオン

ワイルドな景観が広がるスイスのグランドキャニオン 画像提供:スイス政府観光局  www.myswiss.jp

沿線の東の区間(地図上右側)は、列車はライン川の上流部分とほぼ並行して走ります。中でもひときわ異彩を放つ景観は、スイスのグランドキャニオンと呼ばれるライン峡谷。約1万年前にこの一帯で大規模は山崩れが起こり、その後の絶え間ない川の浸食によって出来た地形です。ライヒェナウ駅とイランツ駅の約30分間、グランドキャニオンに似た不思議な景色が車窓から広がります。

荒々しく流れるライン川で、リバーラフティングに挑む人たちを見ることができるかもしれません。

■オーバーアルプ峠
オーバーアルプ峠

氷河特急のハイライト区間がオーバーアルプ峠付近

氷河特急の最高地点が標高2033mのオーバーアルプパス(峠)駅。氷河特急は通過して停まりませんが、列車はスピードを落としながらゆっくり進みます。標高2000mを越えるこの周辺は、例年なら6~7月の時期でも残雪を目にするでしょう。線路のすぐ近くまで迫るオーバーアルプ湖の眺めも印象的です。

サンモリッツからツェルマットへ向かう列車の場合、オーバーアルプパス駅を越えた後はアンデルマット駅に向かってぐんぐん高度を下げていきます。初夏は沿線の牧草地帯に高山植物が咲き誇る別天地。思わず列車から降りて牧草地の上に寝転びたいような衝動に駆られることでしょう。
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