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スイスの民族音楽、ヨーデルとアルプホルンの基礎知識

スイスのシンボルにもなっているヨーデルとアルプホルン。なぜスイスで発達したのかその理由とともに、今も人々の生活に根付いている様子を紹介します。

和田 憲明

執筆者:和田 憲明

スイスガイド

スイスの民族音楽、ヨーデルとアルプホルンの基礎知識

ヨーデルイメージ

民族衣装に身を包み、ヨーデルの声がアルプスに響く 画像提供:スイス政府観光局 www.myswiss.jp


スイスの民族音楽と言えばヨーデルとアルプホルンが有名。日本でも親しまれているこの二つは、スイスを代表する民族音楽としてスイスのシンボル的存在になっています。旅行の最中、運良くお祭りに遭遇して聞く機会があるかもしれません。雄大なアルプスをバックに、風に乗って聞こえるヨーデルやアルプホルンの音を聞けば、スイスに来た実感をさらに盛り上げてくれるでしょう。

ここではヨーデルとアルプホルンに関して興味深いトピックを紹介。スイスで、そして日本国内で実際に聞ける場所などもご案内します。

 

ヨーデル

ヨーデルイメージ:その2

ヨーデルを歌う時は女性も男性同様手をポケットに 画像提供:スイス政府観光局 www.myswiss.jp

ヨーデルは、独自の呼吸法で表声と裏声を切り替えて歌います。夏の間、山小屋に一人で過ごしていた牧童たちが、牧童どうし、また下の村との連絡のための叫びから発達したと言われています。

村の人々は夏が来ると自分たちの牛を牧童に預け、牧童は高地の山小屋で一人牛の世話をしながら寝起きしていたのです。昔は少年の仕事だった牧童の仕事。今は学校があるため、ほとんど大人に取って代わられています。

ヨーデルはドイツやオーストリアの山岳地帯でも発達しましたが、スイスではほとんどの町や村にはヨーデルのコーラスグループがあり、人々の生活に根付いています。

通常ヨーデルは数人のグループが、2から4のハーモニーを重ね合わせながら歌います。ヨーデルの歌詞の多くは、故郷の山や湖などが題材になっています。そして歌い手をよく見ると、必ずポケットに手を入れながら声を出しているのに気付くでしょう。これは手を振る表現を無くし、純粋に歌声だけで表現するためのルールです。

スイスでは3年に一度、連邦ヨーデルフェストを開催。各地の地区大会を勝ち抜いた歌い手たちが集まって自慢の喉を披露します。ヨーデルに加え、アルプホルンや旗回しなど、やはりスイスの牧童たちから受け継いだ伝統の技能も見たり聞いたりできます。場所は毎回スイスの異なる場所で開催。2014年はスイス東部の山岳リゾート地、ダヴォスで7月に開催されました。次回は2017年6月後半、ブリークで開催の予定です。

 

アルプホルン

アルプホンイメージ

アルプホンの音は風に乗ってはるか遠くまで届く


木製の長い角笛のような形をしたアルプホルンは、ヨーデルと並び、スイスを代表する民族音楽です。ヨーデル同様、アルプホルンも夏の間山の上で生活する牧童と下界の村との交信手段として主に利用されました。

また、搾乳の時間になると牧草地に散らばる牛たちを牛小屋に集めるため、そして搾乳の最中も牛の神経を休めて乳の出を良くするため、アルプホルンの音が利用されました。
 
アルプホンと旗回し

一緒によく行われるのが伝統芸能の旗回し

19世紀に入り、チーズ作りは高地の山小屋から下界の村の工場に移ります。そしてアルプホルンも使われる機会が減ったのですが、スイスを代表する民族音楽として保護されています。

アルプホルンは全長3.5メートル前後のものが多く、持ち運ぶ時はこれを3つに分けます。スイスでは主に樅の木が材料に使われ、木をくり抜いて外側に籐を巻き、割れにくくするためにニスを塗ります。
 
アルプホンの装飾

先端にはスイスらしい絵が描かれているものが多い

マウスピースを付けて吹きますが、通常の管楽器にあるような穴はなく、音階は唇と息の微妙な調節で行います。素人にはわずかな音を出すことさえ難しく、美しい音色を響かせるには相当の鍛錬が必要だと想像できます。




 

スイスでヨーデルやアルプホルンを聞ける場所


■ルツェルンのフォークロールレストラン「シュタットケラー」

ルツェルンには観光客向けにヨーデルやアルプホルンのショーを楽しみながら食事ができるレストラン、シュタットケラーがあります。場所は旧市街の一画。世界各国からの観光客で賑わい、楽しいひと時を過ごすことができます。フォンデュやラクレットなど、スイスの伝統料理の他、ランチやディナーのお得なセットメニューも用意。ショーは例年4月から10月頃まで。

シュタットケラー Stadtkeller Muski-Restaurant
住所: Sternenplatz 3,  CH-6004 Luzern
Tel: +41 41 410 47 33
お店のホームページ


■シーニゲプラッテ
 
シーニゲプラッテ

ミニ登山電車で上がるシーニゲプラッテ

高山植物園があるユングフラウ地方の人気のビューポイント、シーニゲプラッテでは、例年6月から10月後半、アルプホルンの演奏が行われています。場所は登山電車の山頂駅付近にあるシーニゲプラッテ山岳ホテル。期間中毎日お昼の時間帯に開催。アイガーやユングフラウなどの名峰をバックに聞くアルプホルンの音はまた格別です。


■アッペンツェル
 
アッペンツェル

カラフルな家並みのアッペンツェル

スイス東部の村、アッペンツェルは伝統工芸の宝庫。ヨーデルやアルプホルンなどスイスの民族音楽もこの地でしっかり根付いています。アッペンツェルのヨーデルは、ナトゥアーヨーデルと呼ばれる、歌詞がないメロディだけのヨーデルで有名。村のレストランや広場で定期的な演奏が行われています。

 

日本のヨーデル歌手


■北川桜

スイス、ドイツ、オーストリアアルプスのヨーデルを全てこなすプロのヨーデル歌手。スイスで開催される連邦ヨーデルフェストにも参加し、1級(最高級クラス)を獲得。全国各地のイベント等で活躍中。

北川桜オフィシャルホームページ



■伊藤啓子

アムスレ ヨーデル クヴァンテット、スイス アンサンブル エンツィアン などのユニットを主宰し、まだ日本で紹介されていない数多くのスイス民俗音楽を発掘しながら演奏活動を行う。連邦ヨーデルフェストにも4大会連続で参加。最高ランクの評価を受けている。

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※海外を訪れる際には最新情報の入手に努め、「外務省 海外安全ホームページ」を確認するなど、安全確保に十分注意を払ってください。

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