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資金流出に歯止めがかからないグロソブ

日本最大の純資産残高を持つファンドといえば、国際投信投資顧問が設定、運用する「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」です。このところの円安を背景に基準価額は上昇傾向。となれば、再び人気が高まるかと思いきや、資金流出に歯止めがかかりません。これは、ファンドの運用にとっては非常に厳しい状況と言えます。

鈴木 雅光

執筆者:鈴木 雅光

投資信託ガイド

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基準価額が上昇しているグロソブの今後の運用成績は……

グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)の純資産残高は、4月8日時点で1兆
グロソブの今後を考える

グロソブの今後を考える

6347億500万円。この規模は、国内で設定・運用されている投資信託の中では文句なしのトップです。しかし、かつて同ファンドの純資産残高がピークだった頃は、5兆円をはるかに超える規模を誇っていただけに、現在の純資産残高はかなり寂しいものがあります。

どうしてここまで純資産残高が目減りしてしまったのでしょうか。マーケットの環境が悪かったという点は、もちろんあります。2008年のリーマンショック以降、急激に円高が進みました。同ファンドに組み入れられているのは、世界中の債券が中心です。それらは外貨建て資産であるため、円建てで基準価額が表示されていても、そこには為替差損益が含まれています。

つまり、組入資産の資産価値が全く変わらなかったとしても、円高が進めば基準価額は下落しますし、逆に円安が進めば、基準価額は値上がりするのです。同ファンドはさまざまな国の債券に分散投資しているため、基準価額が影響を受ける通貨も、米ドルだけではありません。ユーロもあれば、英ポンドもあります。リーマンショックの前から直近の円高値を見ると、米ドルが1米ドル=110円から75円、ユーロが1ユーロ=169円から94円まで、いずれも大幅な円高になりました。それだけでも、運用成績にとっては大きなマイナス要因です。

あるいは販売サイドの問題もあるでしょう。昨今、販売手数料を稼ぐ目的で投資信託を販売する証券会社、銀行がたくさんあります。この手の販売金融機関は、とにかく「今、売れるものを売る」という傾向が強いため、目新しいファンドが出てくると、古いファンドを解約して、乗り換えを勧めようとします。これまでは他のファンドを寄せ付けないほど高い人気を誇っていたグロソブも、通貨選択型ファンドなど新しい仕組みのファンドが人気化するにつれて、それに乗り換える動きが一気に加速しました。

さて、そのグロソブですが、アベノミクス効果による円安の影響で、基準価額は順調に上昇しています。昨年11月12日時点の基準価額は4855円。それが4月8日には5786円まで上昇しました。率にして19.17%の上昇です。実に堅調に見えますが、一方、資金の純流出入がどうかといえば、これは相変わらず資金流出状態にあります。この5ヶ月余りで基準価額は大きく回復しましたが、設定額と解約額を比べると、解約額の方が大きく、資金流出に歯止めがかかっていないことが分かります。

投資信託は、資金流出に歯止めがかからなくなると、途端に運用成績が伸びなくなります。解約資金を準備するため、ファンドマネジャーは保有している資産の切り売りをせざるを得ず、まともな運用が出来なくなるからです。

足元の運用成績は決して悪くないのですが、資金流出が続いて止血出来ていないことを考えると、これから同ファンドの運用成績は、ジリ貧になる恐れがあります。目先の基準価額の上昇に惑わされないように、注意して下さい。

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