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これぞ花形! 皐月賞・日本ダービー・菊花賞の魅力

イギリスの競馬を模範に作られた皐月賞・日本ダービー・菊花賞。この3レースは「三冠」と呼ばれ、ホースマンの夢舞台とされてきました。そして、見ている私たちも三冠に魅了され続け、レースになると人に見せられないほど興奮しています。ではなぜ、私たちは三冠レースにそこまでの魅力を感じるのでしょうか。その理由をお話しします。

河合 力

執筆者:河合 力

競馬ガイド

三冠レースを語るうえで欠かせない、青春時代の話

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桜の余韻残るなか行われる、三冠第1弾の皐月賞(写真 JRA)

人生の中で学生時代を「楽しかったなあ」としみじみ感じる人は多いはず。私も中学・高校が人生のピークでした。いわゆる青春時代ですね。それからはなだらかな下り坂の人生です。

それにしてもなぜ、青春時代があれほど楽しかったのでしょう。「働かなくて良かったから」という、リアリティ満載な意見もあるでしょうが、真剣に考えると、「知らないことがたくさんあったから」という気がします。

初めての経験があり、自分の未来はまったくの未知であり、だんだんと人生が広がっていく感覚があり……。未完成な自分が、新しい経験を積んで良くも悪くも変化していくところに楽しさを感じたのではないでしょうか。

「何の話をしているんだ」と思った方、回りくどくてすみません。私が言いたいのは、競馬の三冠レースである皐月賞・日本ダービー・菊花賞は、サラブレッドの青春時代に行われるということ。そしてそれこそが三冠レースの魅力だということなのです。

三冠レースは、サラブレッドたちの学生スポーツ

サラブレッドの競走生活は人と似ていて、デビュー可能となる2歳の夏から3歳の夏までは心身ともに未完成なため、同世代だけで戦い、その後、年上の馬たちと同じレースに出るようになります。つまり3歳夏が高校卒業で、それから社会に出る形。

そこで、同世代の戦いにおいて頂点を決めるのが三冠レース。最初の2戦である3歳4月の皐月賞と5月の日本ダービーは、人間でいえば高校時代のチャンピオン決定戦。つまり、春のセンバツと夏の甲子園。

さらに、10月には同世代最後の戦いとなる菊花賞。これは大学選手権のようなもので、同世代全員が参加するわけではありません。3歳の秋には年上のレースに参加することもできるので、言わば高卒から直接プロ入りするルーキーのように、あえて同世代の菊花賞には行かず、年上ばかりの「社会」に出て行くケースもあります。ただ、最後の同世代決戦を制したいという熱い挑戦者も数多くおり、菊花賞も前2戦に負けず劣らずの白熱したレースとなります。

なお牝馬は、桜花賞・オークス・秋華賞という三つのレースが「牝馬三冠」とされており、いずれも皐月賞・日本ダービー・菊花賞の1週前に実施されます。

そして、ここで改めて青春時代の話。まだレースをよく知らない、数戦しか戦ったことのない未完成な少年たち……ではなく馬たちが挑むのが三冠。

三冠戦線を歩む中でレースの難しさを知り、弱点を克服するために努力し、かたや栄光を知り、かたや挫折を知り、その雪辱に燃えるものもあれば、途中で反抗期のようにドロップアウトしたり、輝きを失ったりする馬もいる。もちろん、ケガでの戦線離脱もあります。そんな戦いの中で見えてくる、各馬の成長。

三冠レースは、いわば同世代の頂点を競うサラブレッドたちのほろ苦い成長ストーリーなのです。これこそが三冠レースの魅力。サラブレッドの青春群像劇が繰り広げられているといっていいでしょう。GReeeeNの曲が流れても不思議はありません。

さらに、その三冠レースを魅力あるものにするのが、にくいほどに趣向を凝らした全3戦の舞台設定。次ページでは、その絶妙さを説明します。

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