神宮(伊勢神宮)で行われる
式年遷宮(定期的に行われる遷宮)を意味する切手
上の写真は、「神宮式年遷宮」を記念して1929年に発行された2種類の切手のうちの1枚で額面は3銭です。私が所有していないもう1枚は、1銭5厘の薄い青のもののようです。神宮式年遷宮というのは、神宮(伊勢神宮)で行われる式年遷宮(定期的に行われる遷宮)を意味します。
伊勢神宮では原則として20年ごとに内宮(皇大神宮)・外宮(豊受大神宮)の2つの正宮の正殿、14の別宮のすべての社殿を造り替えて神座を遷し、その際宝殿外幣殿、鳥居、御垣、御饌殿など計65棟の殿舎のほか、装束・神宝、宇治橋なども造り替えられます。
歴史的には神宮式年遷宮は持統天皇の治世の690年(持統天皇4年)に第1回が行われて以来、中断や幾度かの延期などはあったものの、1993年(平成5年)の第61回式年遷宮まで、およそ1300年にわたって行われています。そして今年2013年には正遷宮(神体の渡御)が予定されています。
この切手の面白い点は構図です。杉の木立の間から内宮の側面を望んだ景観が取り上げられているのですが、なぜかわずかに屋根が描かれているだけで塀が前面を塞ぐいくぶん不自然な構図が採用されています。
これは内部の露出をできる限り制限しようという意図が表れたものといわれています。
理由は、伊勢神宮の宗教的な権威を示すものとも、神秘性の強調ともとれます。またわずかに描かれた屋根の描写が正確なことや、記念銘が正式な「神宮式年遷宮記念」で、俗称の「伊勢神宮」の表記が避けられている点も注目ポイントです。
この小さな切手の中にさまざまな意図が読み取れて、興味深いおすすめの1枚だと思います。