留学中に感銘を受けた
「SUZUKA CIRCUIT PARK」を台湾・高雄市の複合商業施設内に建設する予定の大魯閣株式会社の副会長、謝國棟氏は実はかつて日本に留学をしていたことがあった。謝氏は留学時代に訪れた鈴鹿サーキットに魅了され、この空間を台湾でも実現したいと思ったそうだ。また、謝氏は鈴鹿サーキットの走行会員であり、時折、鈴鹿を訪れてはレーシングカーでサーキット走行を楽しんでいる大の鈴鹿ファンなのだ。提携を発表した記者会見には三重県知事と鈴鹿市長に加え、台湾から高雄市長も来場。右から2番目が「SUZUKA CIRCUIT PARK」の発案者である謝氏。 【写真提供:MOBILITYLAND】
実は、台湾には数年前まで本格的なサーキットは存在せず、多くの台湾人ドライバーが鈴鹿市内のレーシングガレージと契約し、鈴鹿クラブマンレースに参戦し、腕を磨いてきた。ようやく最近になって国際レースも開催可能な「PEN BAY INTERNATIONAL CIRCUIT」が建設されたばかりで、台湾ではようやくモータースポーツの歴史が始まったところと言える。謝氏が熱い思いを持って建設を計画する新施設には台湾における「モータースポーツの普及」という思いも込められている。
世界中の人を魅了するSUZUKAブランド
3月2日、3日に鈴鹿サーキットで開催された「モータースポーツファン感謝デー」でゲストとして来日した2輪の元世界チャンピオン、エディ・ローソン氏もイベントのインタビューの中で「遊園地で小さな子供たちが電動バイク(ツーリングバイクというアトラクション)に乗って遊ぶ姿を見て本当に美しい光景だと思った。母国アメリカにもこんな施設が欲しい」と情感たっぷりに語っていた。ファンを掻き分けるようにホテルとコースを往復していた現役時代には気づかなかった鈴鹿サーキットの魅力を、ローソン氏も今回改めて感じることができたようだ。ローソン氏が感動したと語った電動バイクのアトラクション「ツーリングバイク」。
【写真提供:MOBILITYLAND】
その特異なレイアウトと攻略の難しさから、世界屈指の名コースと名高い「鈴鹿サーキット」。多くの名勝負の舞台となり、世界中の選手が憧れるコースでもある。特にヨーロッパでは「SUZUKA」の名前は他の大都市よりも有名な日本の地名になっている。
また、近年、伸び盛りの東南アジアでも「SUZUKA」は憧れの地になってきているようだ。最近は2輪の「鈴鹿8時間耐久ロードレース」にマレーシア人ライダーなどが参戦。タイ人のライダーも600ccクラスで全日本チャンピオンに輝くなど、鈴鹿や日本のレースシーンはどんどん有名になっている。そんな中、今年、鈴鹿サーキットは急速にレベルアップを遂げている「アジアロードレース選手権」を初開催することが決まった(8月31日~9月1日)。アジアのライダーたちに憧れの鈴鹿サーキットを走ってもらうチャンスを提供するのだ。
余談だが、先日、ガイドはインドネシアのジャカルタ市内で、偶然にも「鈴鹿サーキット」のロゴを貼付けた日本車を発見した。クルマ好き、バイク好きが「SUZUKA」に強い憧れを抱いている証拠と言える。
SUZUKA CIRUITカラーに塗られたRX-8(ジャカルタ市内)
また、鈴鹿市内には「モリワキ」「TSR」など2輪の世界選手権レース用のバイクを製造する名門コンストラクター(車体製造業者)が所在するほか、4輪のレース用フォーミュラカーを生産する業者、カーボンファイバーの部品を製造する業者もある。
単に有名なサーキットと地名というだけに留まらず、世界のレースを支える高い技術力を持った人々が働いていることも忘れてはならない。こういう事実はモータースポーツファンでもごく一部のコアな人にしか知られていない。しかし、海外の人たちは鈴鹿サーキットや鈴鹿市のレース企業が持つブランド力に魅力を感じ、目を向けているのだ。決して大きくはないが、そこには確実なビジネスチャンスがあるといえる。鈴鹿の街と海外をつなぐ新たな展開に期待したい。
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