テクノロジーは使いこなせばいい
私が個人的に「株価ノート」を受け入れられない理由は、ローテクであることです。なんとなく努力と根性を求められている体育会系的ノリも感じられます。体育会系ノリで運用成績があがるなら、私も毎日ヒンズースクワット100回してもいいですが、そんな根性論でうまくいくなら世の中苦労しません。今の時代、Yahoo!ファイナンスに行けば、月次でも日次でもインデックスの推移をすぐ取得できます。同じ時間を使うなら、ノートに手書きするより、Yahoo!ファイナンスでチャートを何度も眺めたり時系列データを入れ替えながらチェックするほうが有意義です。毎日、身につかせることが大事なら、スマホ等で自分に毎日経済データを送るように仕掛けを作ったほうがいいでしょう。新聞社やネット証券のメールサービスを使えば、毎日終値を見る習慣をつけることも可能です。
また、紙のうえの手書きデータは検索性が低いのが問題です。この点でもインターネットのデータベースを活用して、検索するほうがいいと思います。特に20代~30代の個人投資家は無理をして手書きノートにこだわる必要はないと思います(紙の新聞をハサミで切り抜かないとニュースクリッピングは価値がない、と言う人に株価ノートが大事という人はどこか似ています)。
要するに、今の時代に見合った、テクノロジー活用を考え、投資を学んでいけばいいのではないでしょうか。
ノートをつけずともマーケットとつきあう術を身につけよう
また、前のページでお話したとおり、本業の仕事や家族との時間を大事にしつつ、投資とつきあっていくことを考えるのでしたらなおさら、「ノート」というハードルが投資を遠ざけてしまう恐れがあり、それが心配です。普通の会社員、子育て中の主婦にも投資をしてほしい、と私は考えています。むしろノートがなくてもできる投資方法を選択して、投資を実行すればいいのではないか、と思います。
私が提案するのは「ゼロ円から投資をスタート」「毎月数千円から数万円程度の投資信託の積み立て」「走りながら生きた経済の値動きを学ぶ」というパターンです。これにより、大きく2つのメリットが生まれます。
1つは未熟な投資家であったため、失敗をしてもダメージが少額にとどまることです。投資信託の値下がりが一瞬にして10%下がることはまずなく、年率で20%以上下がることもそれほど多くありません(途中で見切りをつければダメージはもっと小さくてすむ)。ゼロから積み立てていれば残高も小さいため、数千円から数万円の損失ですみます。むしろ少額のお金で経験を積むほうが将来に活きてくると逆転の発想で考えてみるのです。株価ノートと同様の効果は十分に期待できます。
2つは無理に相場を読む投資をしなくてもいいということです。相場を読んで自分は出し抜こうと考えるので、相場を読むトレーニングとしてノートが必要になります。しかし逆転の発想をして、そもそも普通の会社員の投資なのだから相場の平均程度を堅実につかめばいい、と考えればノートは不要になります。投資信託は相場の平均的上昇(せいぜい数%くらいのプラス)を狙うものが多く、仕事をしながら投資をするには最適な商品のひとつです。
もちろん「株価ノート」をつけたいと思い、実行する意欲もある方はどんどんチャレンジされるといいでしょう。しかし、会社員3400万人が全員ノートをつけることはありえません。「ノートをつけないと投資しちゃダメかな」と思う人は無理せず「ノートをつけなくてもいい投資」をしてみてください。