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夫婦二人の、わがままシアターライフ(2ページ目)

熟年離婚が増える中、成熟した夫婦の生き方が問われています。秋の葉山。ホームシアターを中心として、活き活きとした人生を送る、ひと組の夫妻を取材しました。

塩野 哲也

執筆者:塩野 哲也

空間デザインガイド

ホームシアターの第一人者を目指す

夫妻
カデンツァの峰松夫妻。愛犬達と一緒に。葉山の海を一望できる3階のリビングダイニングにて

画面
140インチクラスのシアターの大画面。ヨーロッパの街並を映すと、自分がそこにいるような気分になる
峰松さんは、大手家電メーカーに在籍中、オーディオ・ビジュアル(AV)一筋の人生を歩んできました。その人生に転機が訪れたのは、インテリアとの出会いでした。それまでのAVといえば、音や映像だけの機能を追求し、配線がむき出しになった部屋で孤独に楽しむものでした。

ホームシアターという言葉がまだ一般的でなかった20年程前、峰松さんは会社から「サウンドファニチャー」(AV機器用の収納家具)の開発を命じられました。家具にはまったく知識のなかった峰松さんでしたが、やがてその世界にのめり込んでいきます。家具とオーディオ機器をどうマッチさせるか、研究の日々が続きました。

開発に奔走するうちに、会社で定年退職を踏まえた個人研修が行われました。当時45歳。定年のことなどまだ考えていなかった峰松さんにとって、年金や退職金の計算は、遠い先のように思えました。しかし怒られてばかりの企業研修とは違い、親身に相談に乗ってくれる担当者の言葉が心に響いたそうです。

50歳のときに、第2回の研修がありました。その時にはっきりと退職後の人生を意識しました。このままではいけない。では何を目指そうか。その時考えたのが、自分が開発したサウンドファニチャーを、さらに発展させたホームシアターの世界を確立することでした。

雑誌連載をスタート。それが意外な反響を呼ぶ

本
インテリア雑誌の連載を一冊にまとめた「ホームシアターハンドブック」
しかし……。どうすればよいか。峰松さんは懇意にしていたインテリア雑誌の副編集長に相談し、ホームシアターの雑誌連載をスタートしました。多忙な毎日のなかで、月に一度の連載は大変な負担でしたが、ホームシアターのプランニングノウハウを解説した初めての試みとなりました。

この連載は一冊の本にまとまり、いまもホームシアターのバイブルとして増刷を続けています(「ホームシアターハンドブック」ステレオサウンド社刊)。それをきっかけとして、著名人や社長宅のホームシアターの設計を依頼されるなど、ホームシアターの第一人者としての基盤が確立されていきました。
外観
「カデンツァ」の2階では、最新のAV機器とホームシアターのための家具を提案。インテリアと機器の調和を大切に考えている
その頃に、自分のホームシアターショップを持つ、という構想が固まりました。それもただのショップではありません。ホームシアターをゆっくりと体験してもらえる、一軒の家のようなショップです。家電といえば大手量販店が台頭した時代。そんなことは夢のまた夢と思われました。

しかし峰松さんは諦めませんでした。その時、社内でベンチャー事業部長の募集が始ったことを知りました。その中のホームシアター事業部に応募し、見事抜擢されたのです。事業部が立ち上がり、そこでホームシアターをビジネス化するための様々なノウハウを開拓しました。それが「カデンツァ」の原型になったといいます。

超わがままな6つの条件

外観
ホームシアターショップ「カデンツァ」の外観。在来工法の木造3階建
峰松さんは在職中から、ショップのための候補地探しをスタートしました。不動産業者にだした条件は6つ。葉山マリーナの近く、海がよく見える、県道に面している、お気に入りのレストランの近くにある、富士山が見える、面積は100坪……。人気沸騰の葉山に、そんな土地あるわけないよ!と不動産業者も呆れるわがままさです。

数年がたち、もう諦めかけたころに、奇跡の土地が見つかりました。葉山マリーナのすぐ目の前。湘南の海が一望できる場所です。そこで大きな決断をしました。60歳の定年まで3年を残し、退職することを決めたのです。いよいよショップのプランニングが始まりました。その条件は、まず職と住が一体であること。お客様に生活空間のなかでホームシアターを体験して欲しい、という願いからです。

海
「カデンツァ」の3階からは、湘南の海が一望できる。この景色を手に入れるまでには、長い月日がかかった
ここでひとつ疑問があります。ショップの設立のためには多額の資金が必要です。大手家電メーカーとはいえ、退職金だけではまかなえません。定年後静かに余生を送れば、安定した生活は約束されたはず。奥様は反対しなかったのでしょうか。

「やりたいことは、実現して欲しかった」と奥様はいいます。ご自身も茶道や英会話教室を開いた経験があり、お客様と触れ合いながらの人生は、リスクはあるけれど、面白いと思ったそうです。ここに熟年夫婦が活き活きと暮らす鍵があると感じました。それは45歳の社員研修に参加したことをきっかけに、定年後の人生設計を二人で共に、計画的に考えてきたことです。

二人が理解しあい、ともに努力を重ね実現した夢のショップ。お客様がホームシアター以上にひかれているのは、峰松夫妻の夢への情熱と、実りある人生の喜びを伝えようとするホスピタリティではないでしょうか。

カデンツァ 〒240-0112 神奈川県三浦郡葉山町堀内172-1
TEL.046-876-0777(来店される際には、事前に電話連絡をお願いします)
基本設計:大川設計
実施設計・施工:葉山工務店
内装:カンディハウス横浜・HAYAMAインテリア
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