エベレストへの玄関口
標高3440mの街 「ナムチェ」
ナムチェ・バザールは、エベレスト・ベースキャンプへ向かうトレッカーが集う、この付近最大の街です。飛行場のあるルクラから、約18キロメートル、急げば一日で行ける距離に位置しています。
ルクラからはやや登りで、河原を歩いたり、目もくらむような橋を渡ったりします。時にはかなりの斜面を登ることになります。ここはヒマラヤ山脈の中にあり、四方を名も無き山々に囲まれ、遠方には雪を頂に載せた8000メートルを越える峰々も、彼らの気分次第で、雲の間から顔をのぞかせます。
街の中心は、トレッカーのために用意されたホテルやレストラン、登山用具店や土産物屋でひしめきあっています。ポーターやヤクによって運ばれた品々が集まり、小高い丘の上では毎日市がたち、日用品からさまざまな香辛料が売り買いされています。
酸素は明らかに平地より薄く、高高度における身を切るような風が、時折吹き抜けてゆきます。
ここへ行くには、自分の足で歩くしかありません。バスなどの公共交通機関はもとより、オートバイですら走れる道がありません。馬を雇って向かうこともできますが、ほとんどの人がトレッキングを楽しんでいます。カトマンドゥやルクラからガイドを雇ってもよいですし、単純な道のりですので、地図を片手に一人でも十分たどり着けます。
しかし、高山病には気つけなければいけせん。ナムチェは標高3440メートル。カトマンドゥは1330メートル、ルクラで2840メートルあります。飛行機でいきなり1500メートル以上高いルクラに到着し、さらに600メートルほど高いところに登ることになります。個人差はありますが、この標高でも頭痛や吐き気などといった、症状がでる人もいます。もしもそのような症状があらわれたら、無理をせず引き返すほうがよいでしょう。
郊外へ足を運ぶとそこでは、シェルパ族などヒマラヤに棲む、普通の人々の暮らしが営まれています。鼻を垂らした子供達が元気に走り回り、所有者のわからない鶏や山羊がそこらを駆け回り、畑を耕す大人たちは、埃にまみれながら談笑を楽しんでいます。
この世界の果てのような、圧倒的な景色の中で営まれるのどかな生活と、中心部はトレッカー達で賑わうナムチェ・バザール。あらゆる文化が融合し、渾沌とした中にも、厳しい自然環境の中にアイデンティティを見いだしてきた、ネパールの歴史が、今日も綴られてゆきます。
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