輸入車/注目の輸入車試乗レポート

予想どおり、でも乗りたいGTスピードコンバーチブル(3ページ目)

初代の道筋を踏襲して“予想どおり”登場したハイパフォーマンスモデル、ベントレーコンチネンタルGTスピードコンバーチブル。「ストーリーもインプレションも想像できるのに、乗らずにいられない! 」魅力をラスベガスの国際試乗会からお伝えします。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド


豪快加速も健在、フィールはクーぺと遜色なし

ベントレーコンチネンタルGTスピードコンバーチブル

車高とダンピングを走行状況に合わせて適正化するセルフレベリングシステムはノーマルモデルより10mm低く設定された

フーバーダムをこえ、アリゾナ州に入ると、ルート66である。砂漠の中の、一本道。遠くにみえる切り立った崖や、まばらな植物、朽ちかけたドライブインなどをしりめに、よく整備されているとはとても言えないひび割れた舗装路を、ひたすら進む。「前なんか見なくてもいいねえ」とパオロが言った。それくらい、真っすぐで、信号もなければ、交差点すらない。クルマだって、ほとんど見ない。

ここなら、少しくらいGTスピードの実力を試してみてもいいだろうか。周りに“何もいない”ことを何度も確認して、アクセルペダルを踏み込んだ。

軽く踏んでいるあいだは、喉を鳴らすネコのような音が心地よかったものだが、強く踏めば、虎に変身だ。およそベントレーとは思えない、豪快な吸排気サウンドが、まるで空気の塊となってクルマのど真ん中を、前から後へと抜けてゆく。ズドーン、ズドーン……。

加速タイムはわずかに劣っている、とはいえ、体感する加速フィールそのものはクーペのそれにまるで遜色ない。3000回転以上からの、豪快な加速は健在だ。むしろ、下界との敷居が半分ない(オープン)ぶん、スリルがあって速いと思う。風と音が、ダイレクトに感じられるからだ。オープンカーの醍醐味、である。

巨体ロードスターの鼻先を小気味良く

ベントレーコンチネンタルGTスピードコンバーチブル

4WDシステムは前後トルク配分を40:60とし、ハードなコーナリング時のアンダーステアを最小限に。また、走行条件により前後のトルク配分を変更し、最適なグリップを確保する

その日はグランドキャニオンまで、とりたててスリリングな道はなかったけれども、翌日、フェニックスを目指す道すがら、森の中のワインディングを駆けることができた。路肩に少しばかり雪が残る状況だったけれども、ウィンタータイヤと電子制御4WDが不安を抑えてくれる。道路から雪と氷の気配が完全に消え去った。パオロに断って、車速をがんがん上げていく。

後輪に少し余計に伝達される強大なトルクのおかげで、フロントに積む12気筒の重さをさほど感じさせないのは、クーペのときと同じだ。フロントアクスルのしっかり感も申し分なく、巨体のロードスターの鼻先を、右へ、左へ、小気味よく向け続けることができる。アクセルペダルを踏みすぎないのが肝心、だが、レスポンスよく音と力を発揮するチューンドW12のパフォーマンスに、ついつい右足が先走り……。

そんなとき、強力無比なブレーキパフォーマンスがものをいう。ひょっとして、加速よりも減速の方が気持ちいいんじゃないか。そう思わせるほどの制動パワーと安心の制動フィールがあった。気持ちよく停まることが分かれば、またついつい右足に力が入って……。

気づけば、アッと言う間にフェニックス。街中には、またもや警察車両の影がちらほら……。慌てて気分を引き締めなおし、タウンスピードも快適なベントレークルーズを、ふたたび楽しんだ。
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