通勤及び勤務中の交通事故の位置づけ
交通事故が起きたのが通勤途中・勤務中であった場合、それは「労災事故」になります。相手がある交通事故の場合は「第三者行為災害」と呼ばれ、被害者側には損害賠償請求権が発生します。つまり被害者は「事故を起こしたあなたが、私の治療費や車両の修繕費を払ってください」と請求できるのです。
二重に補償を受けることを防ぐために、下記の仕組みになっています。
- 先に自賠責保険から損害補償が行われた場合、その分の労災保険給付は受けられない
- 先に労災保険給付を受けた場合は、受けた部分については自賠責保険に対して損害補償を請求することができない
自賠責保険、労災保険、どちらを優先すべき?
法律上は、どちらを優先すべきかの規定はありません。ただ、自賠責保険というのは、過失割合に応じて損害補償が減額される仕組みがあります。労災保険にはこのような仕組みがないため、「自分の過失割合が大きい」「過失割合について事故の相手ともめている」などの場合は、労災保険を先に使う方が良いでしょう。また労災保険を使えば治療費の自己負担がゼロになりますし、疾病が治癒するまで休業損害補償(休業の4日目から給付基礎日額の60%)と特別支給金が支給されることになります。
しかし、自賠責保険を使った場合には「自由診療を受けた」という扱いになります。このため医療費は医療機関の言い値になってしまうことも。すると、自賠責保険の限度額(傷害に対して120万円、後遺障害・死亡に対して3000万円)を、使いきってしまう可能性があり、こうなると本来はもらえたはずの「慰謝料」を、もらうことができなくなります。
自賠責優先のほうが良い場合もある!
小さな事故の場合、自賠責を優先するメリットのほうが、大きいこともあります。- 自賠責には「慰謝料」があります(労災保険にはなし)
- 療養費の対象範囲が労災保険より広い
- 休業した場合、休業損害は100%カバーされる
- 仮渡金制度、内払金制度などがあり、給付金を速く受け取ることができる
以上のことを踏まえ、事故の程度や過失割合などを考えて、どちらを優先させるか検討する必要があるのです。